いびつな日本社会 ― 高齢者を羨む若年層 (9/1付)
東日本大震災後に、日本人の意識や価値観が大きく変わったと言われている。リクルートが発刊する男性ビジネスマン向けフリーマガジン「R25」と、若者層のマーケティング調査機関「M1・F1総研」が、若手ビジネスマンを対象に、震災による意識変容調査を行った。 調査では、25―34歳の男性会社員の51・2%が「世の中に対する関心が高まった」と回答。具体的には「日本の将来が不安になった」(89・8%)、「政治への関心が高まった」(80・9%)、「血縁を大切に思うようになった」(80・1%)など。また、「自分の将来が不安になった」(75・0%)よりも、日本の将来に対する関心の方が高まっている結果から、「内向き志向」と評された20―30代男性が、震災のショックで外の世界に目が向き、世の中への関心に“目覚めた”のではないか――と分析している。ボランティア希望者が増えたこともその一因と捉えている。
震災を機に、若年層の意識が「外向き」になったのは当然である。震災前の日本は大多数の人たちにとって、“安全”であり、少なくとも、よく知らない海外よりも快適であった、はずだ。しかし、3・11以降、毎日地面は揺れ続け、原発事故後は「自国が安全」とは程遠いことを思い知らされたのだから。
そんなことよりも、気になるのが、「自分たちの世代は上の世代より損している」と考える人が、74・6%を占めることだ。若年世代に「世代間格差の被害者」意識を抱く人が多いというのだ。「高齢層の多い日本では、高齢層に都合の良い政策ばかりが優遇される」と考える人が67・2%と、全体の3分の2を占めている。
僕が若かりし頃、戦時中に生まれた父や、戦時を生き抜いた祖母の世代から、「お前は幸せな時代に生まれた」と羨まれた。その高齢層を、若年層が羨む時代になった。世代別人口が逆ピラミッド型のいびつな日本社会。社会のマジョリティー化する高齢層に対し、ますます少数派に向かう若年層の恨み。
先日、静岡県熱海駅のホームは観光用の特急列車に乗る旅行者で溢れかえっていた。ホームの端から端時まで歩き、数百人がホームにいたのだが、それら人々の平均年齢は70歳を超えていた。この異様さこそが、今の日本の現状であり、観光の現状なのだ。
(編集長・増田 剛)