自主財源の運営難しく 世界水準のDMO有識者会議
2018年12月3日(月) 配信
観光庁は11月28日に東京都内で、「世界水準のDMO」(先駆的インバウンド型DMO)の第2回有識者を開いた。今回は既存の日本版DMOの取り組みについて聞き取りを行った。テーマは「地域の関係者間のマネジメント」に据えた。ただ財源と人手の不足が課題だとする声が多く、自主財源のみで運営するのは難しいとの意見があった。
ヒヤリングは山陰インバウンド機構(福井善朗代表理事)と、秩父地域おもてなし観光公社(井上正幸事務局長)ら3者に実施した。山陰インバウンド機構は現在17人で24本の事業を抱える。地域間のマネジメントでは、縦割りでなく階層別で会議体を設け、合意形成をはかっているという。
一方、福井代表理事は「とくに現場に出ることができる人材をいかに育てるか。これが地方部だと不足がちになる」と人口流出が多い地方部の悩みを吐露した。
秩父地域おもてなし観光公社では、会議体を主導で進めるなど、地域間の事業者らをまとめるよう努めている。今後の課題について井上事務局長は「自主事業は増えてきているが、ヒト1人雇うことが精一杯だ」と国や自治体からの負担金や補助金、委託料などによる運営は厳しいと述べた。
現状、DMOはジレンマに陥っている。出向者や自治体から派遣された人材が多いため、人件費は掛からないが中核的な人材が育ちにくい。一方、人件費をかけて人を雇えば、組織の運営が厳しくなるといった状況だ。いかに自主財源を確保し、組織を回せるかが今後の大きな壁となりそうだ。
このほか同会では、前回有識者からの指摘を踏まえ、日本版DMO(86団体)のKPI達成状況などを調査した。KPIの設定時には「延べ宿泊者数」「旅行消費額」「来訪者満足度」「リピーター率」は必須項目となる。これらの単年度目標に対し、すでに4~5割の日本版DMOが達成率100%だったと報告された。
さらに日本版DMO(候補含む208法人)の取り組み状況について、6つの大枠を設定して現在調査を進めている。調査項目に委員からの指摘が多かった「地域の関係者間のマネジメント」「DMOが実現を目指すビジネスモデル」「ヒト・モノ・カネに関する資源の確保や配分」の3つを含めることとした。調査内容はとりまとめている段階だという。なお、第3回の会議は12月13日に、第4回は20日に開く。
自主財源問題は、直接の現場を持たず、市町村に誘客・収益をもたらす県域レベルのDMOにとっては深刻と感じる。