野田内閣発足 ― 観光は外交政策の柱(9/11付)
9月2日、野田連立内閣が発足した。通常、新たな内閣が発足した場合、各大臣の就任あいさつを深夜まで見ていたが、今回はなぜか興味も湧かず、読書をしていた。野田内閣に期待をしていないわけではない。ただ、毎年新内閣が発足するので、もはや新鮮味がなく恒例の役所の人事異動程度の関心しか抱けなくなってしまったのだ。それでも一昔前の、2―3世議員ばかりが顔を連ねた内閣に比べれば、雲泥の差だ。ジャン=ジャック・ルソーも「社会契約論」の中で「世襲議員による政治は最悪」と指摘している。 野田内閣の最大の使命は「東日本大震災の復興」と「東京電力福島第一原子力発電所の事故対応」。そして、とりわけ「福島の再生なくして日本の再生はない」と語る、その言葉通りだと思う。また、発足直後の2日の初閣議で内閣の9つの基本方針が決定した。一番目に「国民の生活が第一」の政治を実現――をあげているが、その真骨頂を忘れないでほしい。生活者の視点が抜け落ちた政治家の言葉は非常に薄っぺらいので、信用しないことにしている。
さて、歴史を紐解くと、国内でごたごたが続くと、隣国がその空隙を突いてさまざまな利権に手を伸ばそうとする。日本はこの半年間、東日本大震災と原発事故の対応で手いっぱいだったが、外に目を向けると、尖閣諸島の中国漁船衝突事件、韓国との竹島問題、ロシアとの北方領土問題を抱えたままである。さらに、沖縄の米軍普天間基地移設問題、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加の是否決定も迫る。まさに内憂外患。
鳩山由紀夫元首相、菅直人前首相も外交、防衛については暗かった。野田内閣の玄葉光一郎外相、「私は安全保障の素人」と発言した一川保夫防衛相も経験不足が心配されるが頑張ってほしい。「毎年変わる大臣なら、ヘンにかき乱されるより素人の方が扱いやすい」と官僚に思われては困る。それこそ政治が軍事に優先する文民統制も怪しくなる。そして、言うまでもなく、観光は外交政策の重要な柱の一つ。場当たり的ではない、戦略的な観光政策を望む。
今回の民主党代表選には5人が立候補したが、幾つかの討論番組は国家観ではなく「親小沢か、反小沢か、脱小沢か」が主な論点だった。これでは日本の政治家の外交力や見識も磨かれない。
(編集長・増田 剛)