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精神性求める旅に ― 快適な宿坊に注目(1/11付)

2012年1月11日
編集部

 昨年のクリスマスは和歌山県の高野山で過ごした。東日本大震災という大災害のあった年の終りに、日本のどこか静かな場所で祈りを捧げたい思いと、昨年9月の台風12号で被災した紀伊半島を訪れたいという2つの気持があったからだ。

 2年前に和歌山を旅行した際には、熊野三山のうち、熊野本宮大社、熊野那智大社を参詣したが、今回は熊野速玉大社を訪れることができ、私の心はすっきりとした。今回の旅では、日本最古の温泉として知られる湯の峰温泉を訪れ、日本秘湯を守る会の「あづまや」や、粉雪が舞い散る幻想的な「龍神温泉下御殿」の温泉にも浴することができた。そして念願だった川湯温泉の冬季限定の仙人風呂にも入ることが叶い、有意義な旅となった。23日に宿泊した山水館川湯みどりやは、台風12号の水害で川沿いの露天風呂が完全に埋まり、1階部分も浸水した。しかし、その気配さえ微塵も感じさせなかった。聞けば、「河原の露天風呂は年に何回か増水によって埋まるし、1階が浸水することも10年に1度はある」とのこと。馴れたもので、自然と密接な関係にある宿の再生力の強さと柔軟性を感じた。

 クリスマス・イブの24日は高野山の宿坊・福智院に宿泊した。当日は歴史的な大雪で、龍神高野山スカイラインで吹雪のなかチェーンを前輪に巻いた。その直後、崖下へダイブするかのような大スリップのあと、自分の車が後輪駆動だと知った。 

 高野山は30センチほどの積雪で、白銀の世界に宿坊が建ち並ぶ、まさに静寂の世界だった。

 宿坊・福智院はすごかった。室内装飾の美術品などはどれも歴史を感じさせるもので、壮麗だった。畳敷きの客室は広く、床暖房と暖房器具がフル装備されていて、雪景色を眺めながら暖かく過ごせた。精進料理も美味しくいただいた。若い修行僧が御膳を持って来てくれ、布団も敷いてくれた。トイレも高級旅館並みに綺麗で、宿坊がここまで快適性に優れているとは、正直知らなかった。さらに露天風呂があるのもうれしかった。朝のお勤めに参加したあと、冷え切った体を温泉で温め直した。多くの人が宿坊の快適性とおもてなしの心を知り得ていないのではないだろうか。スピリチュアルな旅には、宿坊が最適だ。空からは牡丹雪が舞い落ち、静かな白銀の高野山で瞑想した。

(編集長・増田 剛)

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