東京スカイツリー開業 ― ふっきれた高さに敬意(6/1付)
5月22日に開業した東京スカイツリーは、「希望の塔」なのかもしれない。近年、暗いニュースばかりが日本を覆っていた。いや、バブル経済が崩壊してから20年以上、日本は自信を喪失することの方が多かったが、久々に空を見上げ、明るい表情になったような気がする。
エッフェル塔も東京タワーも、東京スカイツリーも、自立式電波塔としては誕生時に高さ世界一。賛否両論があっても、次第に愛されていくのだろう。
小さな頃に読んだ本に、世界三大無用長物というのがあった。エジプトのピラミッドと、中国の万里の長城、そして日本の戦艦大和と書いてあったが、どれもその壮大なスケールが、今もドラマチックに魅了する。
観光地は、それぞれが「オンリーワン」であるため、一つの舞台上で競争することはできない。しかし、「ナンバーワン」であることが、必然的に人気観光地になることが、今回の東京スカイツリー誕生を見て感じたことだった。世界一のものに対して、人々は、それが自然物であれ、人間の建造物であれ、敬意を示すものなのだ。
たとえば、莫大な費用をかけて世界で2番目に早いスポーツカーを造るのなら、むしろ「オンリーワン」の車を造った方がいいだろう。世界で2、3番目に大きなサッカースタジアムを造るのなら、もう少し頑張って、世界最大のサッカースタジアムを造った方が絶対にいい。地方議会などでは、良識派の議員や首長が、あと一歩のところで思いとどまり、適正規模より中途半端にデカイものを造って大赤字を出してしまうケースが全国で散見される。だが、どうせデカイものを造るなら、思いっきりふっきれた方がいい。投資に対する見返りがきっと大きいはずだ。だからといって、陳腐な発想や、思いつき程度のハリボテではまったく意味がない。市民の血肉を注ぎ込んだ、歴史に耐え得るドラマチックな建造物でなければならない。
東京スカイツリータウンの「開業5日間で来場者100万人突破」は恐るべき数字だ。仙台市と同規模の人口が、わずか5日間で訪れたことになる。この現象は当分続くだろう。来場者の多くは、両手いっぱいにお土産やグッズを買って帰る。浅草や隅田川周辺との新旧文化の対比も面白い。ぜひ世界の人々にも東京、日本の魅力を感じてほしい。
(編集長・増田 剛)