ピンクリボンのお宿ネットワーク発足 ― 高い社会的関心に驚き(7/21付)
「ピンクリボンのお宿ネットワーク」が7月10日、設立された。会長に就任した福島県・穴原温泉の畠ひで子氏(匠のこころ吉川屋女将)は、「高齢者や障害を持たれた方などさまざまなお客様を受け入れる宿にとってピンクリボンのお客様も一つのお客様。誰もが旅を楽しめる環境づくりに賛同される全国の宿泊施設や観光関係団体、企業さんとともに、全国500の主要病院、看護師会、患者さん団体とネットワークをつくりましょう」とあいさつした。実際、規模の大小に関わらず、岩手県から鹿児島県まで全国の40軒を超える旅館が参画してくれた。設立総会後にも一般紙に大きく取り上げられた影響もあり、事務局を務める旅行新聞新社には一時、一般の方々からの問い合わせや、参加方法を知りたいという宿泊施設からの電話が「鳴りっぱなし」という状態になった。これほどまでに社会的な関心が高いとは思わなかった。
設立総会には、乳がん患者を代表して、CSRプロジェクト理事の桜井なおみさんが講演した。桜井さんは「温泉の脱衣所では、胸を隠せる壁際を選びます。洗い場では目の前に鏡があると後ろから見られているのではないかと気にしてしまうので、仕切り板などがあるところはすごく助かります。入浴着もありますが、私たちは、自ら(乳がん患者だと)手を挙げているようでなかなか着れないのです。それよりもむしろ、脱衣所にタオルが積み重ねてあり、『体を洗う時、拭く時にご自由にお使い下さい』とさりげなくメッセージが添えてあるだけで私たち十分なのです」と話した。講演後には会場の女将さんや経営者からさまざまな質問が桜井さんに寄せられた。
乳房再建手術の第一人者といわれる市立四日市病院形成外科部長の武石明精氏も設立総会に出席した。武石氏は「私たちも一生懸命にやっていますが、年間約5万人の患者さんのうち、乳房再建手術を受けられる患者はせいぜい2千人。乳がん患者さんの生存率は80―90%と非常に高く、何十万人の方が乳房がないままです。乳房を再建した人だけが温泉に行ければいいのかという問題ではないし、病気だけ直せばいいというのは一昔前の医療。このネットワークによって、乳房再建ができない方々も温泉に行けるようになってほしい」という言葉が胸に刺さった。
(編集長・増田 剛)