出張のひとり旅 ― 温泉旅館に泊まりたい
先日、岡山県倉敷市に出張で訪れ、翌日に兵庫県・城崎温泉に出向くスケジュールだったので、その途中にある大阪や京都のビジネスホテルではなく、有馬温泉で宿を取ろうと思い、インターネットで検索してみたのだが、有馬温泉には出張族が素泊まりできるようなプランが見つからず、諦めてしまった。実際にはビジネスマン向けの出張プランはあるのかもしれないが、私の探し方が悪かったのか、思うような宿に巡り合うことができなかった。
出張宿泊費はたかが知れているので、有馬の名門旅館に泊まろうなどとはハナから思ってもいない。小さくて、古くてもいいから安い宿に泊まらせてもらい、共同湯「金の湯」で「有馬温泉のありがたい湯に私も少しだけ浸からせていただきたい」などと考えていたのである。
業界内外のいろいろな人から、「出張ついでに温泉地の宿に泊まりたい」という声を聞く。しかし、温泉地の宿の方で、受入れを閉ざしてしまっている印象を受ける。
宮城県仙台市に近い作並温泉の「鷹泉閣 岩松旅館」では、早くから女性のひとり旅を受け入れている宿だ。「平日の出張ついでに温泉に入りたいという女性たちの潜在需要は大きく、もったいない」と岩松廣行社長は話す。
今回の1面でも登場する北海道の鶴雅グループの大西雅之社長も「(旅館が)これまで取りこぼしてきたひとり旅や、ペット同伴の旅行者を受け入れなければ、国内旅行市場はますます縮小するし、成熟もしない」と語っている。
人気旅館だから頑張っているのではなく、頑張っているからこそ人気旅館なんだと改めて感じた。
結局、その夜は有馬温泉ではなく、姫路駅前のビジネスホテルに宿泊した。姫路には以前から行ってみたいと思っていたので、ちょうど良かった。工事中にも関わらず、ライトアップされた姫路城は異様に美しかった。
夜の姫路城見学後、アーケード内の居酒屋に入り、ビールやサワーを飲みながら、焼き鳥やら串カツやらを注文して、結構へべれけになるまで呑んでしまった。料理は旅館より上か。最後に注文した焼きおにぎりとお新香がすごく美味しかったので、帰り際に支配人にそう告げると、うれしそうな顔をしていた。
(編集長・増田 剛)