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ICTが普及 ― 土地の魅力はどこに?

2013年2月21日
編集部

 ICT(情報通信技術)が普及して良いところは、都市生活と田舎暮らしの間の情報格差があまり大きくならない点だ。大都市に生活や仕事の場を拘束されずに済む。

 今後さらに、LCCなどの交通網が発達すれば、格安の料金で遠距離の移動も可能となる。物価の安い田舎で生活しながら、都市ともつながるという生き方もできる。自分の人生をどのように生きていくかという選択肢も広がり、生きる自由度も飛躍的に増すのではないかと思っている。

 先端的な人は、東京を離れ、北海道や東北、首都圏近郊では房総半島や伊豆半島、関西や九州、沖縄など、自分が生まれ育った町や、生きてきたなかで好きになった町で暮らしながら、東京で仕事があれば上京するという人が増えている。ゆとりある時間と空間のなかで農業をしたり、子供と遊んだり、豊かな生活を満喫している。

 一昔前の作家をみても、温泉宿をこよなく愛した川端康成は言うに及ばす、坂口安吾は京都・伏見や小田原、取手、伊東などを転々とした。太宰治も甲府で静かな生活を送り素晴らしい仕事をしている。谷崎潤一郎も関東大震災後、生まれ育った首都・東京から、京都、兵庫に移住し関西文化にのめり込んでいった。アーネスト・ヘミングウェイはパリの甘美な蜜を充分に吸い取ったあとは、フロリダのキーウエストでフローズン・ダイキリと釣り三昧の日々を送った。インターネットのない時代で、日本の田舎町や世界の外れで素晴らしい仕事をしている。自分の生き方に合った文化や風土を持つ土地に魅せられて暮らし、人生を楽しんだ人たちだ。

 地方都市を訪れ、空港や駅舎、劇場、旅館を眺めていると、都会的なデザインを拝借してスタイリッシュに仕上げている光景を目にする。だが、残念ながら「無個性」である。機能性重視の時代においては、建築物の無個性化は世界的な傾向であり、やむを得ないのかもしれない。しかし、それでは、その土地で暮らす「人」が魅力なのだという結論になってしまう。

 更地に何かを築き上げる場合、どこかの素晴らしいモデルを真似ることが可能だ。しかし、その土地の魅力が何であるかを掘り起こすには、他所の真似ができない。土着性と深くつながらなければ、誰も足を止めない。

(編集長・増田 剛) 

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