次世代を担う旅館経営者 ― “新しい波”を感じる
次世代を担う若手旅館・ホテル経営者16人が3月13日に、山形県・天童温泉のほほえみの宿滝の湯に集まり、「旅館と地域の明日を創るフリートーキング」を実施した。
これは観光庁の事業で、地域を活性化させるためには、新しい時代を担う若手の旅館・ホテル経営者を育成していかなければならないという視点に立ったものだ。本紙3面でも紹介しているが、参加者たちは熱く、真剣に、自分の宿のこと、そして地域のことを語り合っていた。
会場となったほほえみの宿滝の湯は、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部の山口敦史次期青年部長の宿。また、2月20日に東京ビッグサイトで開いた第1回旅館甲子園の発起人・横山公大全旅連青年部長、その第1回旅館甲子園でグランプリに輝いた宮城県青根温泉の観山聴月の原太一郎専務も参加し、新しい波を起こしている。
原さんは、仙台のあるレストランで、スタッフ全員の目がとても輝いていることに感銘を受ける。そして「ともに喜べる仲間、本気のチームがほしいと思った」と振り返り、今では「お酒のつまみは僕たちの働く姿」「思手成し(おもてなし)日本一を目指す」「青根温泉を日本一活力のある温泉地にしたい」と話すまで宿を成長させた。
この観山聴月の原さん、前回本紙の1面特集でも取り上げた新潟県の越後湯澤HATAGO井仙社長の井口智裕さん、そして「活力朝礼」を実施する高知県高知市の土佐御苑の横山公大さんの宿でもそうだが、経営者とスタッフが一体化するまでの苦労は並大抵のものではない。しかし、経営者の熱い変革の思いが、いつかスタッフの胸に届き、高いレベルで一体感が生まれてきた良い例である。そういえば、宿の紹介をする場合、少し前の世代の経営者は、風光明媚な観光名所や美味しい魚介類、温泉成分の特徴などを述べたあと、宿の特徴を控えめに語り始める人が多かったが、今は宿の理念や、スタッフ・仲間のことを第一に熱く語る経営者が増えているのが特徴だ。
さまざまなサービスを簡素化した格安の旅館チェーンが一定のニーズを獲得した。一方、有名温泉地でも、歴史的名旅館でもないが、「働くスタッフの魅力と、チームワークのおもてなしで直球勝負しよう」という若手経営者が増えているのは頼もしい。
(編集長・増田 剛)