test

のんびりできない温泉地 ― 弱点の昼間で勝負決まる

2013年4月21日
編集部

 「温泉地でのんびりしたい」と思うのは、きっと多くの人々の共通の願いである。しかし、現実は、ほとんどの温泉地ではのんびりなどできないのである。悲しいけれど、むしろ東京や大阪のほうが、のんびり、ゆったりできる。

 私はドライブ旅行が好きで、日本中、あちこち旅をする。とくに好きなのは田舎道である。クルマの窓を開け、季節を感じる風の匂いを吸い込みながら、ゆっくりと走るのが好きである。温泉も大好きなので、道路脇の看板に温泉地の地名が現れると、寄らずにいられない。古くから湧く温泉地の歴史の象徴である共同浴場や、秘湯と呼ばれる宿で個性的な湯を自然の中で楽しむ。そこまでは、文句のつけようのない半日である。

 旅の大きな楽しみの一つに食事がある。ハンドルを握りながら、「何か美味しいものを食べよう」と道の左右を探すのだが、いつだってチェーン店以外はあまり見つからない。幾つかの廃屋になったままのレストランが続き、やがて山の中に向かい、温泉地に到着する。「温泉地には1軒くらいまともなレストランはあるだろう」と淡い期待をしながら探すのだが、大抵、見事にその期待は裏切られてしまう。温泉地で美味しいランチを食べるということは、それほど難しいことなのである。

 ミシュランも、東京や関西をはじめ、主要都市部・観光地で星付きレストランを紹介しているが、日本の田舎道で“きらりと光る”レストランを網羅するのはまだまだ時間がかかる。

 温泉地の弱点は昼間である。観光地としては、最も多くの人でにぎわうはずの時間帯が、“ゴーストタウン化”してしまっている温泉地を数多く見てきた。夕方遅くお客が来て、早朝に去って行く。温泉地は夜だけの顔で今後も存続していけるのだろうか。活気のある温泉地は、昼間だってにぎわっている。

 長野県・戸倉上山田温泉は、4月から毎月26日の昼間に、旅館のお風呂を無料開放する。旅館にとってのメリットは何か。滝の湯の武井功氏は「昼間の時間帯に温泉街に活気が出る。宿が地元の食事処のマップを配ることで、滞在時間が増える。また、地域の人にも自分の宿を知っていただく機会となり、旅人との会話の中で宿を紹介してもらえる」と語る。勝負の分かれ目は、午前10時から午後3時である。

(編集長・増田 剛)

いいね・フォローして最新記事をチェック

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。