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盛り上がる今夏の旅行業界 ― 気になる海外旅行の減少

2013年7月21日
編集部

 旅行業界が久しぶりに盛り上がっているのではないか。JTBの夏休み旅行動向によると、国内旅行人数、総旅行人数とも過去最高となる見通しだ。インバウンドも好調で、順調にいけば、今年の訪日外客数1千万人達成も可能な範疇にある。

 旅行動向は世相を反映する。戦争やテロなど国際情勢の悪化、社会不安、増税、経済危機などマイナス要素は、真っ先に旅行動向に大きな影響を与え、繊細に反応する。一方、好景気など好要素や、風評被害からの回復などは、他業界よりも影響が遅れがちな傾向がある。旅行動向によって、社会全体のムードが読み取れる。

 今夏は総旅行消費額も前年同期比4・7%増の3兆3016億円で過去最高が予想されている。旅行消費意欲の高まりを意味しており、旅行業界にとっては歓迎すべき数値だろう。だが、重要なのは、その数値に隠された中身の吟味である。

 国・地域別にみると、中国、韓国との交流が停滞している。日本は近隣数カ国に偏った外交や国際交流ではなく、幅広い国と多角的な交流が必要である。グローバルな視点から、バランスの取れた国際的な人的交流の拡大が大切になる。しかし、このような状況のなか、今夏の海外旅行者数は前年同期比で5・8%も減少している。燃油サーチャージの高止まりもあるが、円安による旅行費用の増大が海外旅行に足踏みを与えている。さらに深読みすると、全般的に旅行動向は好調に見えるが、実はシニア層が中心で、若年層は「蚊帳の外」というのであっては、喜ぶわけにはいかない。若者が海外旅行に「行けない」という、この悲劇的な状況を少しでも改善していく努力が、国や旅行業界に必要だと感じる。

 円安をとっても光と影の両面がある。輸出産業に追い風が吹く反面、費用を捻出できず海外留学を諦める学生もいる。副作用の物価高、増税も若年層の旅行意欲を削ぐ。国にとっては投票率の低い若者。旅行会社にとっては儲けの小さい若者。けれど、若者(未来)への投資を惜しむ日本であってはならない。観光立国推進閣僚会議は「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」で、外国人旅行者を優遇する消費税の免税制度を14年度税制改正大綱に盛り込もうとしている。大変結構なことだが、枝葉末節の処置にも見える。

(編集長・増田 剛)

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