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旅館軒数2020年には3万5000軒? ― 減少のペース、速くなるかも

2013年11月11日
編集部

 厚生労働省が発表した2012年度衛生行政報告によると、旅館軒数は前年度から1452軒減少し、4万4744軒となった。一方のホテルは9796軒。減少を続けている旅館は、それでもホテルの約4・5倍の軒数がある。これは少し不自然な割合なのかもしれない。

 旅館軒数が毎年1500軒ずつ減ると想定すると、7年後の2020年東京オリンピックの年には3万5千軒前後になる。

 今回の統計で驚いたのは、ホテルの軒数がマイナスに転じたことだった。これまでホテルは微増ながら年々増加を続けていた。しかし、そのホテルも1万軒を目前にして、前年度比で67軒減少した。訪日外客数の伸び悩みに加え、国内旅行の低迷、旅行や出張などの日帰り化などが理由に上がるが、現状における国内旅行市場の限界がこの規模と捉えるべきなのだろう。

 楽天トラベルがこのほど発表した年末年始の海外旅行動向は前年同期比88・8%増で、「贅沢旅行」を志向する傾向が強いという。景気の上昇気分が働いてくれば、たとえ円安や燃油サーチャージの高止まりという逆風であろうとも、「海外旅行に行きたい」というムードは強くなる。これは世界共通の感覚だろうし、日本も外国人旅行者を受け入れない限り、旅行市場規模は拡大していかない。

 「お・も・て・な・し」が話題になっているが、日本のおもてなしのレベルは本当に大丈夫だろうかと思う。

 少し前のことだが、感動したことがあった。小さな地方都市のレストランに入ったときのことだ。若い接客係のお兄さんが笑顔で旅人の私を迎えてくれた。テーブルの席に着くと外が暑かったので出された水をあっという間に飲み干してしまった。ゆっくりとメニューを広げ、ワンプレート料理とアイスコーヒーを注文し、水のお代りをお願いしようと顔を上げたときに、接客係のお兄さんは私のグラスを取り上げ、待たせる間もなく、氷が並々と入った新しいグラスを持って来てくれた。普通のことかもしれない。でも、最近の料理店やレストランでは「すみません、お水を下さい」とこちらから申し出ないと(接客係が忙しい時間帯ではない)、お客のグラスの水が空っぽになっていることも気づかない店が多いのだ。だが、そのレストランは「お水を下さい」と客に言わせる前に、とても気持ちよく持って来てくれた。素晴らしいサービスとは、お客が何を欲しているのか、常に目を配らせ、客が係に告げる前に察して行動を移すことだと思う。

 畳敷きの広間が朝食の食事会場となる旅館は多い。セルフサービスで、お代りをするときには、大きな電気炊飯器まで広間の端から端までお茶碗一つ持って、移動しなければならない。若ければいいが、70、80代の高齢者にとって、畳敷きに据えられたお膳の席を立ったり座ったりするだけでも大変である。

 そのとき、お客の数と同じくらいの仲居さんが広間にいた。仲居さんはときどき席を見回っていたが、空になったお茶碗を見ても何をするでもない。見ていなかったのかもしれない。客の少ない大広間で、足を引きずりながらお茶碗一つを持って覚束なく歩く高齢者を眺めながら、セルフサービスが宿の決まりなのか、仲居さんたちはおしゃべりを続けていた。もしかしたら、旅館が減少するペースは、もう少し速くなるかもしれない。

(編集長・増田 剛)

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