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「提言!これからの日本観光」  「自転車観光」を考える

2018年12月24日
編集部

2018年12月24日(月) 配信

自転車観光の普及に期待したい(写真はイメージ)

近年、自転車による観光が急速に普及してきた。自転車が排気ガスを出さず、環境にやさしい乗り物であることや、自転車の性能が向上し、長距離の旅行にも堪えるようになってきたことが、その要因のようだ。

 「自転車観光」は環境問題や交通渋滞緩和、観光客自身の観光効果を高めることや、健康にもプラスすることなどから、その普及が期待される。

 一方、「自転車観光」について、深刻な問題が急速に一部観光地などで生じつつある。まず、歩行者との間に生ずる事故、トラブルの多発である。自転車観光のために歩行者と自転車の通路を分離し、自転車専用路が設けられるところが増えてきたが、そうでない所、とくに歩行者で混雑する観光地の道路や、主な街道などの場合が問題だ。

 そこでは自転車と歩行者の接触事故が多発してきたのである。しかも、自動車と異なり、事故状況を確認しにくいこともあり、警察による事故処理もほとんど行われていないという。また、自転車にはナンバーもなく、歩行者も自転車側も「事故」として注意を払わず、多くの場合、加害者は逃げ去り、通行人が怪我人を介護しているケースも見受けられる。結構な重症者が出るのに、いわば泣き寝入りを強いられている、このため自転車でまちを動く観光にみちを使いにくくなりつつあるのが心配だ。歩行者も自転車が気になって、ゆっくり歩くことができない。このため住民との対話、買い物さえままならなくなった地域が続出しているのである。

 このような自転車公害が観光地では急増しつつある。京都市では、主要道の自転車の車道通行を禁止するとともに、朝夕の混雑時間帯は歩道での自転車を押して歩くようにさせる区域も出てきたという。

 このように課題が急増している自転車観光であるが、前記のメリットから今後、国内観光の重要な手段として普及すべきと考えられる。そのための対応策として次のような点を提案したい。

 第一に、主要都市、観光地では、自転車と歩行者の分離を進め、自転車専用道を整備する。また、駐輪場を設けて混雑区間は徒歩観光をすすめることである。第二に自転車による事故も交通事故なのであるから、交通法規の徹底、運転者としての自覚をもって使用するよう啓蒙活動を徹底することである(自転車購入の際、一定の講習を義務付けることや、学校などでこの点の徹底をはかることである)。第三に、自転車にも制限速度を設けることや、昔のようにナンバーを明示することにより、自転車利用への自覚を促すことも必要だ。

 環境にやさしい自転車が逆に観光地では凶器となりつつある現実(筆者も事故を経験しただけに)をみるとき、このような対策はまさに、急務であると思う。急速に普及する自転車観光もここで一旦、立ち止まって過去の反省のうえに立って、安全第一を再確認し、その対策を考えたうえで、次なる段階に進むべき時ではなかろうか。

須田 寛

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏

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