モデル地区選定し社会実験 19年度着手 訪日需要に対応へ インフラツーリズム有識者会議
2018年12月25日(火) 配信
国土交通省は12月25日(火)、第2回のインフラツーリズム拡大に向けた有識者会議を開いた。新たなプロジェクトとしてモデル地区を選定し社会実験を進める。2019年度に早々に着手する見通しで、国内外に発信して訪日外国人旅行者の需要にも対応していく。観光庁の19年度予算でインフラツーリズム推進に13億円を計上し、機運は高まっている。官民挙げて20年に年間来訪者数100万人を目指す。
年度内には手引きをとりまとめる。「誘客」「受入環境整備」「持続的な展開」を念頭に、各インフラツーリズムの「勘所(好事例のポイント)」を整理する。勘所を踏まえ、プロジェクトの推進をはかる。国交省の総合政策局栗田卓也氏は冒頭、「現実的に『なにをどう動かせるのか』を議論していきたい」と述べ、実効性の担保を重要視した。
今回の会議では、インフラツーリズムの理念を定義付けた。「インフラへの理解を深める」「地域に人を呼び込む」「地域との連携を拡大する」の3つの軸を据える。土木広報から始まった見学会に付加価値を付け、施設の魅力を向上し、周辺観光を巻き込んで地域活性化に寄与する考えだ。
このほか、現状報告として、事務局からインフラ施設のランク分けについて説明があった。年間来訪者数が1万人以上はAランク(構成比3%)とし、巨大地下神殿と称される埼玉県の首都圏外郭放水路などを例に挙げた。1千人以上1万人未満がBランク(同11%)、1千人未満がCランク(同86%)となる。
実際の来場者数をみると、Aが約28万人(同60%)、Bが10万3千人(同22%)、Cが8万5千人(同18%)となった。施設数は計317施設、来場者数が計46万7千人で、いずれも17年度の数値をもとに決めた。
一方で、課題もある。Aランクだけで来場者数全体の約6割(28万人)を占め、ほとんどが大都市圏近郊に集中している。ツアーが平日に偏っているといった傾向も浮き彫りになった。施設公開の約8割が施設管理者の主催となり、管理者・自治体の約7割が平日のみしか開催していない。旅行会社のツアーは1割程度にとどまる。
今後は旅行会社などの民間企業と手を組み、公開方法・広報を工夫して、土日・祝日公開に漕ぎ付けるかが、推進への壁となりそうだ。