仏像の顔をAI分析 学生が研究成果発表(奈良大学)
2018年12月29日(土) 配信
人間の感情測定に用いられるAI(人工知能)テクノロジーで、仏像の顔を読み取るとどうなるか―。奈良大学の学生グループによるプロジェクト「Buddience~仏像の顔貌を科学する~」の発表会が12月4日、大阪市内で開かれた。
プロジェクトは、米マイクロソフト社が開発した感情測定テクノロジー「エモーションAPI」を使い、興福寺(奈良市)の国宝「阿修羅像」など、216体の仏像の顔の画像データを測定。「怒り・軽蔑・嫌悪感・恐怖・喜び・中立・悲しみ・驚き」の8つの指標を数値化した。
その結果、阿修羅像は「中立」の数値が低く、人間の表情により近いことが判明。さらに正面より横から見たほうが「悲しみ」や「喜び」の数値が高くなることが示された。調査した学生は「人間の表情に近く、慈愛に満ちた顔が、多くの人々を魅了する要因ではないか」と分析する。
一方で、102体の仏像が測定不能となったが、これは画像が不鮮明であったり、色彩が落ちて面貌が損なわれていたことなどが原因とみられる。また、同一の仏像でも、撮影角度や照明の違いによって数値が変化することも確認された。
プロジェクトを指導した同大文学部文化財学科の関根俊一教授は「すべての仏像を同条件で撮影しないと比較できないため、必ずしも説得力のあるものにはならないが、美術史研究に一石を投じる技術」と評価。参加した学生も「これまで感覚で捉えていたものが数値化できた意義は大きい」と感想を述べた。
今後について、関根教授は「さらに精度が高まれば、仏像が造られた時代によって、数値に特定の傾向が表れるのかといったことも明らかにできる可能性はある。一般的には、魅力的な写真を撮る際に応用していけるのでは」と期待を寄せた。
同大では、同プロジェクトの研究成果をまとめた特設ウェブページを公開。サイト内では、自分の顔を数値化し、どの仏像とマッチするかを診断する「仏顔診断」を楽しむこともできる。