「味のある街」「抹茶と和菓子セット」――安房あづち茶屋(千葉県館山市)
2018年12月30日(日)配信
千葉県館山市の安房神社は安房国一之宮であり、平安時代の「延喜式」に記載されている式内社、旧官幣大社でもある格式高い神社だ。
日本の産業の総祖神として崇敬されており、ものつくり、企業隆昌、事業繁栄、商売繁盛、技術向上、学業向上などにご利益があるという。また相殿神として祭られている忌部五部神は、それぞれ美術、紡績業、建設業などの神だ。さまざまな神の祭られているこの神社は、パワースポットとしても近年注目されている。
本殿は1881(明治14)年築、建築様式は伊勢神宮などと同じ神明造で檜皮葺き。境内には池もあって広々としており、訪れるたびに清々しい気分になる。桜の名所としても有名だ。春には鳥居から続く広い参道の両脇に続く桜並木や、池の周りの桜が見事に咲き誇るようすを見に多くの人が訪れる。
この境内の一画にあるのが、2013年に開店した安房あづち茶屋だ。建物はまだ新しく、木を基調とした明るい店内には、年配の方から若者まで入りやすい雰囲気がある。店の前には緋毛氈の敷かれたベンチがあり、シーズンには桜を眺めながらいただける。
「抹茶と和菓子セット」は、和菓子が春には菜の花やこいのぼり、秋には紅葉などと変わり、季節を感じられると人気だ。ほかに、1日10個限定の自家製プリンも手作りの温かみが感じられると評判が高い。甘酒、抹茶ぜんざいなどもある。お腹の空いた人にはおにぎりセットもあり、これは地元の米を使用している。
店は宮司の夫人を中心に運営されており、いつ訪れても温かく落ち着いた接客で迎えてくれる。参拝の後に少し休もうとして入ってきた人が、これほど質の高いメニューに出会い、温かくもてなされれば、帰りには深い満足を覚えるだろう。
営業日は金、土、日曜と祝日の月曜。限られた日数でも、ずっとここにあってほしいと切に願う。あわせて神社の隣にある「館山野鳥の森」で自然に触れ、展望台からの眺めを楽しむのもおすすめだ。
(トラベルキャスター)
コラムニスト紹介
トラベルキャスター 津田令子氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。