〈旬刊旅行新聞1月11日号コラム〉激変の観光業界 息急き切って時代の先端を快走へ
2019年1月11日(金) 配信
2019年の年明け早々に世界は動き始めている。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が1月7―10日の日程で中国・北京を訪問し、習近平国家主席と会談した。また、韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金に元徴用工への賠償を命じた訴訟で、大邱(テグ)地裁浦項支部が、同社の韓国内における資産の差し押さえを認める判決を下した。
8日には、これらのニュースがインターネット上でも、さまざまに報じられていたので、NHKの報道番組はどのように扱うだろうと、夜の「ニュースウオッチ9」をつけて待っていた。すると、トップニュースは女子レスリングの吉田沙保里選手の引退に関する特集だった。そのあとに、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者が、勾留理由の開示手続きで東京地裁に出廷した内容のものが詳しく報じられた。
そして、次のニュースは将棋の藤井聡太7段が順位戦でデビューから無敗の18連勝を記録したという話題。ここまでに20分近くが経過しており、根負けして別の番組に変えてしまった。
日本は平和なのだと、感じる一方で、テレビの報道番組では、自分の知りたいニュースを見るまでに、相当の時間を要するし、報じられないこともあり得るということを、改めて強く認識してしまった。
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新聞に携わる身として、日々さまざまなニュースが飛び込んでくるなかで、どのニュースをトップ記事として扱うかを考える。だからこそ、他の新聞媒体や報道番組が示すニュースの優先順位が気になる。
その意味で、NHKの報道番組が1月8日に順位づけしたニュースの優先度と、私個人の関心のある出来事との乖離が大きかった。このもどかしさは、日々ネットニュースや、SNS(交流サイト)で情報を収集している大部分の人々が感じていることだろう。公共放送という性格上、さまざまな制約もあり報道の難しさもある一方で、現在の日本の空気感を反映しているのも、NHKの報道番組だと思っている。
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1月7日から、国際観光旅客税(出国税)がスタートした。観光業界では、1年以上前から議論されていたが、一般紙でもそれほど大きく取り上げられることはなく、世間にはあまり知られていないという印象を受けていた。
観光業界以外の知人に聞いても、出国税について知っている割合は低かった。年明けから出国税に関するニュースがネット上やテレビでも数多く目にすることになり、時間差を感じてしまった。
自身に置き換えても、自分の懐が痛まないうちは、たとえ税の問題であっても関心を示さない。広く話題になる前の胚胎期こそが物事の勘所であり、見過ごしがちな部分でもある。
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時流についても、しばしば考える。時代と並走していれば、変化には気づかないものだ。「世の中があまり変わっていない」と感じるのなら、時代とほぼ同じ歩調で進んでいるのだろう。しかし、新しいテクノロジーや概念が次から次に現れてくると、ついていくのに精一杯のときがある。そのときは、「時代の流れから少し遅れをとっているのかもしれない」と危機感を抱く。近年、観光業界の変化は著しい。息急き切って走らなければならないが、一方で、時代の先端を快走する楽しみもある。
(編集長・増田 剛)