「津田令子のにっぽん風土記(46)」格闘技を通じた出会いを大切に~埼玉県川口市編 ~
2019年2月16日(土) 配信
こにしえみさんの小説「ラリアットな女たち」は、プロレスに出会った4人の女性たちの物語だ。テレビでプロレスラーに興味を持った女子高生、キャバクラからプロレス選手に転向した女性、プロレスを習いながら子供を育てる女性、憧れの男子を追いかけてプロレスを習う少女などが登場し、彼女たちの成長が描かれる。
こにしさんは5年前、埼玉県川口市にある自宅近くの総合格闘技ジムに「フィットネス感覚」で通い始めた。仕事がうまくいっていない時期だったが、そこでの出会いが「自分にとって大きかった」と話す。
周りの人が頑張る姿を見て、2年前からは試合出場を想定した、より厳しいトレーニングを始めた。「自分でやってみることで、リングに立つ人の気持ちが分かってきました。その面白さをもっと知ってもらいたい」と、今回の小説を書いたきっかけを語る。格闘技に詳しい人からは読後に「マニアックすぎないか」と心配されたが、詳しくない人からは「格闘技に興味を持った」「見方が変わった」と反響があった。ジムに通う人から「試合に出てみたくなった」と言われたこともうれしかったという。
小説の冒頭は、出身地の京都府・与謝野町をイメージして書いた。「私自身も学生のころ、バラエティ番組がきっかけで格闘技に興味を持ったので、そのころのことを書きたいと地元を舞台にしました」。1時間に1本しか電車がなく、定刻が来ても走ってきた学生を待って発車する場面は、自身の体験にもとづく。大阪にも住んでいたこにしさんには「関西の面白さを書きたい」という思いもあった。女子高生たちの会話は、ツッコミを交じえながらテンポよく進む。
現在は小説を書きながらジムの運営を手伝い、和菓子店などでも働く。ジムは地域に根付くことを目指しており、地元のまつりに出展することもある。また、ジムの会長は以前から「一般社団法人とだわらび青年会議所」に参加しており、地元で理解されることでジムの活動も広がってきた。
青年会議所への参加には年齢制限があるため、昨年末にこにしさんが後任となった。「青年会議所での活動を通じて地域に貢献すると同時に、お世話になっているジムや会長のためにもなればと思っています」。
もちろん、小説の執筆も続ける。ジムの会長も応援してくれているそうだ。「格闘技にまつわる、書きたいことがいくつもあるのです」と語る。
コラムニスト紹介
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。