「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(98)おもてなし行動はお客様を見て 「常に疑問符を持ちながら」
2019年3月9日(土) 配信
日本航空が機内でCAの出身地シールを希望者にプレゼントしているのをご存知でしょうか。CAとの会話のきっかけづくりとして企画されたものです。昨秋に搭乗したときそれを知り、搭乗するたびに「シールをいただけますか」と声を掛けています。
先日も「CAさんのシールは、いつまでいただけるのですか」と聞くと、「3月末までです。お集めいただきありがとうございます。どのくらい集まりましたか」と、会話が弾みました。
その日、搭乗してしばらくすると、CAがニコニコしながら「シールを集めてくださっていると聞きました。今日の搭乗スタッフのシールを集めておきました。まだのものがあれば良いですね」と、わざわざ持ってきてくれたのには驚きました。
地上職員からCAへのバトンリレーで、見事な応対に感動を覚えました。こうしたお客様との何気ない会話のなかから、大切な情報をバトンでつないでいくことで感動サービスが生まれるのです。
しかし、常にバトンリレーが上手くいくとは限りません。国内線でも座席クラスによっては、食事が提供されます。しかし、私は機内ではなるべく睡眠を取るようにしていますので、ほとんど食べることはありません。
飛行機が到着すると、出口に急ぐお客様の間をCAが逆行するように歩いてきます。どうしたのだろうと思っていると、私の前で立ち止まり「お休みのごようすでしたので、機内サービスを控えさせていただきました」と声を掛けてきました。それが出口に向かう人たちの迷惑になっていると気づいた瞬間、本当に恥ずかしくなりました。「それだけのためにわざわざ声を掛けに来てもらわなくても結構です」と何度かお願いしましたが、バトンリレーは上手く行っていなかったようです。
休んでいたお客様に声を掛けなければ、「何もサービスをしてくれなかった、と苦情がくるかもしれない」。そのために声を掛けているように感じました。ところが、別の航空会社では、座席に着くと同じようにあいさつにきますが、そのときに食事についての質問があります。「おそらく寝てしまうと思うので、食事は結構です」と伝えると「ではお目覚めのごようすでしたら、お声を掛けさせていただきますね」と、はじめに声掛けをする仕組みと行動があります。そうすればスムーズなサービスも提供できます。
寝ていたお客様への声掛けを、仕事としたらいけません。その行動の目的は何かを考え、どのような行動が最もお客様に喜ばれるものかを考える。いつもの行動が正しいとは限らないと、常に疑問符を持ちながらお客様と向き合いましょう。
コラムニスト紹介
西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。
あなたの考えるホスピタリティは何かが違う。深いところで「そうだ」とうなづけない。今回のことにしてもあなたの素性(このようなことをSNS等で公にしている)が知れ渡って、過敏に反応していることが原因かもしれない。ホスピタリティは相手の身になることも非常に重要だと思うので、そんなに重箱の隅をつつくような気持ちにならなくともいいのでは?