「観光革命」地球規模の構造的変化(208)SDGsの先進都市
2019年3月10日(日) 配信
国連の総会で2015年に採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現に向けた先進都市の取り組みが加速化している。SDGs(Sustainable Development Goals)は持続可能な発展のために各国が30年までに達成すべき目標として採択。17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)から成る。
SDGsは、環境(水・衛生、気候変動、海洋資源、陸上資源)が最も基礎的な層で、次いで社会(貧困、飢餓、健康、教育、ジェンダー、エネルギー、まちづくり、平和)の層、そのうえに経済(成長・雇用、イノベーション、不平等、生産・消費、パートナーシップ)の層、という3分野が階層化した構造になっている。グローバル目標実現のためには、国レベルに加えて、国内各地域での取り組みが重要になる。日本政府はすでに実施指針やアクションプランの策定を行うと共に、「ジャパンSDGsアワード」表彰を開き、「SDGs未来都市」選定なども行っている。
「日経グローカ」誌は815市区を対象に、「環境」「社会」「経済」のバランスのとれた持続可能な発展という視点で、市区の「SDGs先進度」評価を行った。全国市区の「SDGs先進度」総合順位のベスト10は①京都市②北九州市③宇都宮市④豊田市⑤岡山市⑥相模原市⑦さいたま市⑧板橋区⑨堺市⑩名古屋市――の順。
総合評価でトップの京都市は、地球温暖化対策やゴミ減量に取り組み、省エネ意識の醸成やLED照明への切り替えなどで総エネルギー消費量を大幅に削減。また「歩くまち・京都」を標榜し、人と公共交通優先を推進している。総合2位の北九州市は、地域エネルギー拠点化の推進、環境国際協力・ビジネスの推進、女性や高齢者の活躍を促進させると共に、市民・NPO・企業・大学などが協働して地域課題の解決を推進するためにSDGsクラブを立ち上げている。総合3位の宇都宮市は、「交通未来都市」を標榜し、ネットワーク型コンパクトシティーを目指しており、22年開業予定のLRT(次世代型路面電車)を整備している。
SDGs先進都市は持続可能なまちづくりの結果として、交流人口や関係人口の増加が期待できるので、今後のさらなる発展に注目していきたい。
北海道博物館長 石森 秀三 氏
1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。