「味のある街」「かずさ和牛の炙り寿司」――休暇村館山(千葉県館山市)
2019年3月9日(土) 配信
房総半島南部にある千葉県館山市は34・3㌔の海岸線を持つ「海のまち」である。1年を通じて豊富な魚介類が水揚げされ、寿司をはじめとした海鮮料理が名物だ。しかし、魚だけでなく肉もおいしい。
実は日本の酪農発祥の地は館山市の隣、南房総市の嶺岡地域だ。戦国時代、房総里見氏が軍馬を育てるため「嶺岡牧」を作り、徳川幕府がその領地を没収した後は幕府直轄となった。江戸中期、8代将軍吉宗がインド産の白牛を3頭輸入し、ここで飼育した。搾った牛乳で「白牛酪」というバターに似た乳製品を作り、最初は将軍家への献上品としたが、のちに庶民へも売られるようになった。このとき始まった酪農が、現在の日本の酪農や乳業につながっている。ちなみにこの地はのちに千葉県に払い下げられ、現在も県嶺岡乳牛試験場が置かれている。
房総半島南部、西部を中心に千葉県内各地の牧場で飼育されているのが、県のブランド和牛「かずさ和牛」だ。高品質の飼料、またヨードを含む豊富な水で、ゆったりと育てられている。霜降り牛肉は一般的に脂っこいというイメージがあるが、かずさ和牛は脂の融点が低く、あっさりと食べられるのが特徴だ。また肉色鮮やかで、肉質はきめ細かい。
館山市にある休暇村館山では、宿泊者向けの夕食でこのかずさ和牛を使ったメニューを出している。その一つがかずさ和牛の炙り寿司だ。
使用しているのは、佐倉市や南房総市で育ったかずさ和牛。等級はA3―A4ランクで、その日の仕入れ状況によって少し変動がある。A5ランクは脂分が多すぎるので使わない。最初は何もつけずに、次は塩を一振り、そしてわさび醤油と、さまざまな味で楽しむのがおすすめだ。ほかにもステーキやローストビーフなど、さまざまな形でかずさ和牛が味わえる。
休暇村館山では海鮮料理も見逃せない。冬から早春にかけての時期は金目鯛が旬で、揚げた後に煮る「オランダ煮」などが提供された。そして、これから春に旬を迎えるのが鯛だ。吸物や姿造り、釜飯などで味わえる。
(トラベルキャスター)
コラムニスト紹介
トラベルキャスター 津田令子氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。