【特集No.519】観光公害 解決の糸口を 人数は半分で売上は1.5倍に
2019年3月29日(金) 配信
雪化粧した白川郷(岐阜県)の街並みが暗闇に淡く照らされ、訪れる観光客を楽しませる――。30年以上も前に村民が考え出した「白川郷ライトアップ」は今も人気を博している。ただ増え続ける外国人観光客に悩まされ、いつしか観光公害にまでなっていた。一方、今年はこれまでから大きく舵を切り、イベントは変化した。初めて完全予約制を敷いた結果、人数は半分以上減らしたものの、売上は1.5倍となった。観光公害解決の糸口を探る。 【平綿 裕一】
□完全予約制に大きく舵切る 「白川郷ライトアップ」に変化
「白川郷ライトアップ」は近年、8千人から1万人が詰めかけていた。うち7―8割が外国人旅行者だった。会場となる白川村荻町の人口は約580人で、受入能力をはるかに超えていた。村内混雑や渋滞、住民とのトラブル、景観破壊など、問題は膨れ上がっていた。さらにイベントは補助金頼りの運営が続いていた。
対応策を打ったものの抜本的な解決には至らなかった。16年に警察から指導を受け、「これ以上状況が悪化するならば開催見送りを検討する必要がある」とくぎを刺された。村内では「もう続けるのは難しいのでは」と疲弊感が漂っていた。
イベントは今年1月(計6日間開催)で33回目を迎えた。課題を解決するため、運営方針を刷新した。初の試みとして完全予約制を敷いた。運営・管理を委託されたNOFATE(旧社名:旅ジョブ)の藤田雄也代表は「(観光公害に対し)一定の成果を上げることができた」と振り返る。
予約制により、来場者数を例年から半分ほどの4―5千人に抑えた。村内で唯一集落を一望できる、展望台へのシャトルバスの乗車券は1日1千枚に絞った。公共交通機関のバス利用者も、予約なしでは乗車できないようにした。スムーズなイベント運営を目指し、決済は事前に済ませた。
この結果、常に渋滞していた道路は長くても10分程度の待ち時間にまで減った。展望台行きシャトルバス乗り場でも大きな混乱はみられなかった。大幅に人数を減らし混雑を回避することができた。
「会場がこんなにも整然としているなんて。2011年からイベントに参加しているが驚いた。予約制にして大成功だ」。30回目の来村となった台湾人写真家のチウ氏は、変わりように舌を巻いた。
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予約制は、イベント管理などのプラットフォームを運営するPeatix(ピーティックス)を利用した。予約申込から抽選、決済を事前に済ませ、予約者情報を一元管理した。
予約者情報から国籍・懸念点などのデータを集めることで、現地スタッフの言語や人員を効率よく決定できた。従来20人ほどいた村民らのボランティアをなくしても、問題なく現場を回せるようになった。
「人手が不足する地域でいかに業務を効率化していくか。行動を起こす根拠となる数値をしっかりと把握しなければならない」。藤田氏は経験則だけではなく、客観的なデータによる対策が重要だとする。……
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