「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(99) お客様のお叱りのことはありがたいアドバイス 「どんどんわがままに耳を傾けて」
2019年4月6日(土) 配信
「いいからやれ! 責任は俺が取る」。
そんなしびれるような言葉を、現場スタッフの会議で久しぶりに聞きました。この会議では、自己解決事案について話し合う時間を大切にしています。現場で発生した事案を、ほかのスタッフと共有しながら、もっと良い解決策を探っていきます。
そのときにどう思って行動をしたかを全員に記憶してもらい、いつか同じような場面に出会ったとき、すぐに行動できる力をつけるためです。「あの人だからできた」ではなく、そのときの想いと行動を知れば、誰にでも同様の行動ができるようになるのです。
そのなかで、「それはやりすぎでないのか」と、上司から意見が出ました。あなたにできることでも、ほかの人にはできないかもしれない。別のスタッフからは「やってくれと言われたらどうする」という意見でした。そのとき、上司が発したのが先の言葉です。
今「考動」できないスタッフが増えています。
教えられたことは、ちゃんとできますが、その行動がどんな目的で実行されるべきかを考えずに、ただ教えられたとおりの動作や声掛けを実行している。そこに違和感を覚えるお客様も多いです。これは教える教育者の問題でもあります。
あるホテルで、宿泊客から厳しいお叱りを受けました。この声をどう扱うかは大きな分岐点となります。会議室では「お客様から、こういう内容のクレームがありました。どういう状況だったのか、再び繰り返さないためにどういう対策が必要か」。幹部社員の前で、現場担当者は下を向いたままです。ただ、内心では「誰がやったんだ」と怒りすら感じているかもしれません。
別のホテルでは「先日、お客様からこうした内容の声が届きました。厳しいお叱りですが、ありがたいアドバイスです。どのように活かすべきか検討してみましょう」。スタッフからは「大きなヒントをいただき、ありがとうございます。また1つ良いサービスが創り出せそうです」。
クレームが生まれる瞬間は、お客様の声をサービス提供者が受け止めるときです。お客様の声をクレームと受けとれば、社内的にはクレームとして扱われ、上司から叱責を受けない決められた行動しかとらなくなります。例えそれがお客様を想っての行動でも、上司から言われていない行動は取らなくなってしまう。
クレームを出さない行動だけでは、つまらないサービスしか現場には残りません。
クレームではなく、ありがたいお客様からの声と捉えられれば、どんどんお客様のわがままに耳を傾けて、業務の改善を目指すやる気が生まれてくるのです。
コラムニスト紹介
西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。
クレームに限らず、お客様の意見(ととらえるとスッと入ってくるかも)は自社、若しくは自分の能力を高めたり広げたりする絶好の機会です。思いもよらなかったりする意見がありますよね。ただ私はマニュアルも必要だと考えています。マインドとマニュアル、M&Mこそ最強の武器であり盾だと思っています。