「観光革命」地球規模の構造的変化(209)「スキー場とスノーリゾートの未来」
2019年4月2日(火) 配信
今年の北海道の雪解けは例年よりも早いためにスキー客は残念がり、ゴルフ客は歓迎している。日本のスキー人口は1993年に1860万人でピークに達し、その後減少し続け、15年に480万人。90年代にスノーボードが台頭したが、愛好者は02年に540万人でピークに達し、その後の減少で15年に260万人へと半滅。
国内スキー場は約500カ所といわれているが、リフトなどの設置基数は、93年の約3千基から14年には2351基へと減少。スキー場経営は長らく数多くの地域で基幹産業的役割を果してきた。雇用面で重要だったし、地域にさまざまな経済波及効果を及ぼした。しかしスキー人口の減少に伴って、施設の老朽化対応や安全管理投資の負担が大きくなり、スキー場の衰退に拍車がかかった。
北海道歌志内市の「かもい岳スキー場」は61年に市が開設、アルペン競技が盛んに行われ、五輪出場選手を育てたスキー場だ。しかし利用者は08年度の63万人から昨年度は32万人に半滅。市は老朽化したリフトの更新費用を捻出し難いために本年度限りで休止を決定。近年は中小規模のスキー場の閉鎖が相次いでおり、市民に身近なゲレンデの閉鎖よるスキー文化の衰退が懸念されている。
一方インバウンド激増による外国人スキー客の急増でスノーリゾートは大きな変貌を遂げつつある。北海道の倶知安町はいち早く外国人スキー客を招き寄せた町だ。同町の外国人宿泊延数(冬季)は、06年に約9万泊だったが、15年には約39万泊に増加。その内オーストラリア人は06年に約7万泊、15年に約15万泊であったが、アジア諸国からの延宿泊は06年の約1万7千泊から15年の17万3千泊へと激増。
中国ではスキー市場が急成長中で、中国政府は25年のウィンタースポーツ人口3億人を目指している。世界屈指の良質な日本の天然雪はアジアのスキー客を魅了しはじめている。今後は多言語対応の改善、2次交通の充実、外国語対応インストラクターの増員、体験プログラムの充実、決済システムの改善、安全管理の徹底、事故・災害時の体制整備、近隣スキー場間の連携強化などが不可欠になる。天の恵み(雪質の良質さ)を活かして世界中から評価されるスノーリゾートへの発展が期待されている。
北海道博物館長 石森 秀三 氏
1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。