日台の観光格差縮小へ新戦略を 徐 銀樹・栄誉理事長(中華民国旅館商業同業組合全国連合会)×石井 貞德・本紙社長
2019年5月1日(水) 配信
本紙の石井貞德社長は3月14日、観光事業交流のため台湾・台北市を訪れ、中華民国旅館商業同業組合全国連合会の徐銀樹栄誉理事長と1年ぶりに再会した。両氏は、徐氏の経営する京都商務旅館で「日台観光交流のさらなる拡大と、格差縮小に向け官民挙げた新たな戦略の必要性」などについて対談した。
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徐:2018年の台湾人の出国者数は約1664万人で、うち観光・ビジネスで日本を訪れた人は約483万人。全出国者数の約3割を占め、実に台湾人の4・8人に1人が日本を訪れた計算になります。
一方、日本人の出国者数は約1895万人で、このうち台湾が占める割合は約1割程度です。
日台間の相互訪問者数の格差が年々拡大していることを、危惧しています。
石井:確かに重視すべき問題ですね。
多くの日本人は本当に台湾が好きなのですが、現状では、航空機の予約が取りづらいなど問題もあり、今後、改善を要する点でもあります。
また、台湾の官民が連携して、日本の各都道府県を訪れ、観光誘致に努めることで大きなアピールになるでしょう。
徐:政府の観光管轄機関が日本に対し、新しい観光客誘致戦略を打ち出すことが大事です。
さらに、台湾のインバウンド業界も日本を見習い、定期的に日本各地で誘致活動をすべきだと思います。台湾の素晴らしさをアピールすることで、観光客増加のチャンスが出てくるのだと考えています。
現在、日本各地に住んでいる台湾人・台湾留学生にも、台湾の観光発展の一助となるべく「台湾をアピールしてほしい」とお願いしています。
台湾と日本は歴史的、地理的にもつながりが深く、台湾には日本人が観光に訪れたくなる観光資源がたくさんあります。とくに台湾の多くの町には日本時代の歴史的建造物や名所が、そして各地に美味しい食べ物があります。
石井:鉄道の旅も魅力的です。電車で台東に行ったり、あるいは船で緑島に行ったりする旅もいいですね。
私は長年、観光産業に関する人やモノを報道していますが、おっしゃるように台湾各地には風光明媚な観光地や観光ルートも多い。各県市には観光サービスセンターも設置され、観光パンフレットにはすべて日本語による説明があります。
徐:治安も良く、公共交通の利便性も高いのが特徴です。衛生医療面も日本同様に充実しています。インターネット環境も整備されています。
石井:台湾人は人情味に溢れ、日本語が話せる人も多く、物価も日本より安い。日本人が観光するのに最も適した魅力的な観光地だと思います。
徐:台湾と日本は文化的類似点も多く、ともに義理人情に厚く、共存共栄の信念を持っています。より多くの日本の方々が海外旅行の第一の候補地として台湾を挙げてくださるよう、この場をお借りしてお願いいたします。
石井:私も各地で台湾の民間観光大使になり、1人でも多くの日本人が台湾を訪れるよう働きかけています。双方の努力によって、来年再会するときは訪問者の格差が縮小していることを願っています。
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◆プロフィール
徐 銀樹(じょ・ぎんじゅ)氏 1981―88年まで日本に留学し、亜細亜大学、日本大学大学院を卒業。東日本大震災直後から、福島をはじめ東北地方の復興支援に赴いた親日家。