貸切バスの「下限割れ」防止へ 国が手数料記載を義務化
2019年4月19日(金) 配信
国土交通省は、貸切バス運賃の「実質的な下限割れ」を防ぐため、体制強化をはかる。貸切バス会社が旅行会社に支払う「手数料」によって、国が定める運賃の下限を下回ることが疑問視されていた。第三者委員会とも連携し、国が積極的に調査していく。5月からは手数料支払額の記載、19年度からは手数料の年間額を毎年度国に報告することを義務付ける。
2016年1月の軽井沢スキーバス事故以後、安全安心を確保できるよう新たな運賃制度を敷いた。ただ業界からは手数料が負担で安全コストが阻害されているとの声が少なくなかった。
バス運行時、集客した旅行会社に対し、営業活動費として運賃の15%ほど手数料を支払うことは慣習化していた。「手数料を断れば使ってもらえなくなる」――。バス会社からすれば新運賃後の値上げに合わせ手数料率を上げられても、受け入れざるを得なかった。表向きは下限で運行引受書を交わし、受取額との差額を手数料とすることも後を絶たなかった。
一方、業界をまたいで対策を打ってきた。日本旅行業協会(JATA)と全国旅行業協会(ANTA)、日本バス協会、弁護士らで、16年8月に第三者委員会を設立した。通報窓口を設け、過度な手数料などの取引で行政指導が必要な場合は、国に通知することとしていた。
ただ委員会への通報はこれまで53件あったが、国への通知はゼロだった。委員会には必要な証拠となる資料の提出を求める権限がない。資料がなければ調査に踏み切ることができず、そのまま長引いて行き詰まることがあった。
今回の調査体制の強化として、委員会への通報があった場合にすみやかに国へ通知する体制を整える。「これまで権限が無いため、調査が進まなかった事案でも、我われが引き取り、主体的に調査していく」(観光庁)という。第三者委員会は、手数料の商慣習上の取引実態を、専門的な知見から助言し国の調査をサポートしていく。