「味のある街」「ドラ息子」――香嘉園 matcha cafe(愛知県西尾市)
2019年5月12日(日) 配信
先日、愛知県西尾市を訪れた。所用を済ませたあと、まちを少し歩いてみた。西尾は戦国時代に徳川家康の家臣、酒井正親(政家)が入城し、家康の西三河南部の拠点となった土地だ。「三河の小京都」とも呼ばれる、歴史情緒あるまちだ。
この日はちょうど桜が見ごろになっていた。みどり川沿いの桜並木の下に設けられている桟敷席では、親子連れや若いグループなどが食べたり飲んだりしながら桜を見上げていた。ミニSLの乗車体験や、ポン菓子機の実演なども行われていた。桟敷席は有料のようだったが、ほとんどが埋まっており、地域の方々が以前から花見を楽しみにしていたことがうかがえた。
道すがら、緑色の丸型ポストを見つけた。これは特産品である抹茶の色だ。西尾市は国内生産量の約30%を占める、全国一の抹茶生産地である。市内の高台にある稲荷山茶園公園からは、茶畑が一望できる。シーズンになると茶摘み体験のできる場所があり、工場見学も可能だ。またあちこちに、抹茶の飲める店、抹茶を使ったスイーツが味わえる店がある。
西尾駅まで戻り、電車までの時間に入ったのが、駅近くのヴェルサウォークの中にある香嘉園 matcha cafeだ。香嘉園は市内に本社工場のある抹茶専門メーカーで、この店ではそのお茶を楽しめる。抹茶や抹茶のスイーツ、お茶に関連するグッズなどの販売も行っている。
一番人気のスイーツ「ドラ息子」を注文した。抹茶入りのどら焼きの上に、抹茶とバニラのミックスソフトクリームと餡が乗っているものだ。まずどら焼きを一口食べると、抹茶の少し苦いけれど奥深い独特の味が口に広がる。ただ、どら焼きの生地の甘さも同時に感じられるため、苦さは和らぐ。抹茶味のスイーツは最近、外国人にも人気でチョコレートなどさまざまなものが販売されているが、やはり生産地のものは抹茶の味がしっかりと感じられるようだ。ソフトクリームも、抹茶の味と甘さがどちらも濃く味わえる。歩き疲れた体に染みる甘さだ。どら焼きとソフトクリームでボリューム満点。満足できる一品だった。
(トラベルキャスター)
コラムニスト紹介
トラベルキャスター 津田令子氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。