「旅館コンサルタント大坪敬史の繁盛旅館への道(50)」外国人観光客に対するマナー啓発
2019年5月11日(土) 配信
日本全国で、外国人観光客が多く訪れている地域では、多かれ少なかれ旅館の館内でもトラブルが起こっていると思います。
当社クライアント旅館で、日本人の宿泊客のアンケートをみると①外国人が使い捨てのパンツを、洗面所内のごみ箱にそのままポイ捨てしている。
②朝の混雑時間帯に、4―5人のアジア系観光客が大胆にシャワーを使っていて、入るすき間がなかった。間で利用していると、シャワーが強く当たってきた。シャワーはすべて出したまま大きな声で入り、ゆっくりできず残念だった。
③不満があるとしたら、外国人観光客のマナーの悪さです。それ以外は大満足で、次回も利用したい。
④全館禁煙だから予約したが、チェックイン時、玄関の外でアジア系の人たちが煙草を吸っていて気分が悪くなったし、一瞬恐怖感を覚えた。
アンケート内容を改めてみると、これは本当に旅館の責任だろうか、と思うようなことで、お客様からお叱りを受けています。
さらに、そういう場面に遭遇したお客様の多くが、外国人観光客に直接注意せず、多くが「おたくの旅館はどう指導しているんだ」と、旅館に直接お叱りを言われるそうです。
ただ、「お叱り」の言葉と行動で発散しているお客様は良いのですが、大半は不満を出さずに、「もうこの旅館には行かない」と決めておられるお客様が多いと思います。
この旅館も、こうした問題にならないよう対策はしています。例えば、大浴場に多言語表記の「お風呂の入り方」ポスターの掲示や、スマホ撮影ダメなどのピクトグラム、部屋には注意事項をまとめた「日本の旅館の楽しみ方」などのツールは置いています。
そういったツールやネットなどで日本の旅館について事前学習する外国人観光客もいます。そんな方は説明しなくとも、マナーを守って滞在を楽しんでいます。
一方で、マナーを一切気にしない外国人観光客に、掲示物や部屋の案内を見てもらうよう話しても難しい。
ある旅館では、外国人観光客「全員」のチェックイン時に、それぞれの国の言語で書いた「注意事項」を配るようにしました。
今までは「言ったでしょ」と話しても「聞いていない」と逃げられていたので、チェックイン時に渡して読んでもらえば、説得力があります。
さらに、日本人のお客様にも、「対策としてこのようなツールをチェックイン時にお渡ししています」と旅館側が説明して、ご理解いただくのも目的のひとつです。
外国人観光客すべてのマナーが悪いわけではありません。ただ、文化の違う人たちの行動は少しの「違い」が大きく見え、不満につながり、旅館の現場で、こういう問題が起こってしまう。
急増する外国人観光客と「旅館」で一時的にでも時間を共有するなら、互いに気持ち良く過ごすような仕掛けを旅館側で用意しなければなりません。
コラムニスト紹介
旅館コンサルタント 大坪 敬史 氏
大手旅行会社での実務業務を経て船井総合研究所入社。インターネットを駆使したWeb販促&直販売上倍増&即時業績向上ノウハウには定評があり、数多くの宿泊産業の業績向上に貢献。観光文化研究所を設立し代表取締役。