「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(5月号)」
2019年5月23日(木) 配信
〈巻頭言〉
2度の世界大戦により出生率が低下したフランスは、再び移民の受け入れを開始し、1960年代に本格化しました。その後、彼らの労働条件の過酷化や、80年代からの景気後退による国全体の失業率の増加により、政府の移民政策は二転、三転しています。また近年の若者の暴動や国内のテロ事件も、経済移民の定住とその家族の受け入れにより生まれた二世、三世の社会的孤立が表面化した結果でもあり、国策の不備の影響が年々深刻化しています。今年4月、日本政府は外国人労働者の受け入れ拡大を開始しました。多くの専門家たちは新制度への懸念を表明しています。本誌5月号の特集では、そんな日本での外国人労働者の現状を伝えています。文化面では、パリでのイベントを控えた、札幌に暮らす音楽家・クニユキ氏に注目しました。旅ページでは、広島県の三段峡を紹介しています。
(編集長 クロード・ルブラン)
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□特集 「日本、しっかり開いて」
少子高齢化に伴う人手不足への対応として、日本政府はこの4月から特定の分野での外国人労働者の受け入れを開始。5年間で約35万人の受け入れを見込んでいる。外国人の受け入れは初めてではない。80年代バブル期、3K労働の担い手として南米の日系人やアジア近隣諸国の人々を迎えた過去がある。しかしその後20年続いた不景気により、彼らの多くが帰国を余儀なくされた。今回、経済の好転に伴い新たに外国人を受け入れるものの、相対的貧困率が高まる国内の事情は以前よりも複雑だ。日本人は急増する外国人をどう受け止めるのか、「移民」への抵抗感が根強い日本で、彼らの社会適応をどのように支援するのか、次の不況時に彼らはどうなるのか。多くの専門家が、このような課題に対する政策が不十分であることを指摘している。■「コンビニ外国人」著者・芹澤健介氏に聞いた著書の背景。■ウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長・望月優大氏が見た日本の移民事情。■過酷な労働環境を訴える外国人技術実習生たちの声で浮き彫りになった受け入れ現場の実態。■外国籍タクシードライバーを増員した日の丸交通で居場所を見つけた外国人たち。
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□〈ZOOM・JAPON 編集部発 最新レポート〉日本に関する報道
市民革命によって王政を打倒した歴史を持つフランスの人々にとって、現代日本の皇族の存在は理解しにくいと同時に興味深いのかもしれません。各メディアは他の王国のケースと同じように、天皇の退位と新天皇の即位を大きく報じました。そのなかで、女性皇族の地位の低さが象徴する日本社会の男女格差を指摘する記事が印象的です。また、この時期に合わせるように、今月、大手新聞・雑誌が競うように「日本特集号」を発行。どの媒体にも、不思議なニッポンカルチャー、独特な日本社会、魅力のグルメなど、日の丸カラーをベースにした刺激的な記事がおもちゃ箱のように散りばめられています。そのなかには「時の人」として近藤麻理恵(こんまり)さんや、川上未映子さんらの活躍を紹介する記事もあり、いずれにしても女性に焦点を当てているのが特徴的です。観光に関しては、東京、京都に加え、古都金沢や早くから欧州に向けた広報に力を入れていた熊野古道の紹介が主流。まだマイナーな地域にまで言及できる余裕を持つ媒体は少ないのが実情ですが、現在行われている各自治体のインバウンドへの取り組みも、今後長い期間をかけて少しずつ効果が見えてくるのではないでしょうか。
フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旬刊旅行新聞 編集部〉