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100万円の目標達成も支援者続々と 北海道美瑛町の農家が観光公害対策へクラウドファンディング

2019年5月28日
編集部:平綿 裕一

2019年5月28日(火) 配信

美瑛町の農家が立ち上がる

 北海道美瑛町の農家が立ち上がり、今年5月24日から、観光公害を無くすべく、「畑看板プロジェクト」の資金調達を目的としたクラウドファンディングを行っている。目標とした100万円は3日足らずで達成し、5月28日午後5時時点で約144万円の支援が集まった。記事執筆中にも、支援者は増え続けている状況だ。

 「予想以上に反響があり、正直驚いている。全国に美瑛町のファンがいて、自分たちのことのように真剣に考えてもらっていると実感した。とてもありがたい」。PJの事務局の担当者は支援者に感謝の言葉を語った。

 北海道のほぼ中央に位置する美瑛町の農業景観は、観光客に人気だ。3千枚もの四角い畑が広がる丘。同じ作物を続けて作らない輪作体系によって、毎年異なる風景を織り成す。現在では年間160万人もの観光客が訪れる。一般的な観光地とは異なり、農家の営みそのものが観光資源となっている珍しい場所。

美瑛町の風景

 一方、農家と観光客の関係は、溝が深まるばかりだった。2016年に美瑛町では、観光名所として知られ、先代から畑と一緒に受け継いだ大切な「哲学の木」を、農家自らの手によって伐採した。農地に許可なく立ち入り、農地を踏み荒らしながら記念写真を撮影する観光客が来なくなるようにと、決断したものだった。

 近年ではとくに訪日外国人旅行者が押し寄せ、“SNS映え”する写真を 撮ろうと無断で農地に入るなどの観光公害に頭を抱えている。生活の基盤は農業。靴についた病原菌を農地に持ち込まれると、作物が枯れるといった重大な問題を引き起こす危険性がある。文字通り「死活問題」なのだ。

 PJの構想は5年前からあった。観光客を排斥するのではなく、共存する道を探る。農業景観をバックにベストショットが撮影できるスペースを設け、農地所有者の名前を明記した看板を設置する。

新たに設置する看板イメージ

 ただの看板ではない。これまで無断侵入の暫定措置として「立入禁止」の看板を設置していた。しかし、「美しい農業景観のなかで、禁止の看板の存在感が強まっていた。止む負えないことだが、残念でならなかった」と、本意ではなかった。

 今回の看板は、農業景観を損なわないように工夫し、観光客へのおもてなしの気持ちと感謝のメッセージを添えて、農家の想いを観光客に伝える。さらに、看板にはQRコードがあり、ここから農家のメッセージ動画や、SNS、ECサイト、協力金の支援を募るサイトにリンクするようになっている。

 「農家と観光客が『美瑛を守りたい』という同じ方向に意識が向き、互いに共有され、双方がより良い関係性を構築していくことが目的。観光客に農地は『私有地』であり、見る側もこの農地を守っていくことの必要性を知ってもらいたい」。

 「そして、観光客も農地を大切に思っていることをすべての農家にも感じてほしい。この小さな取り組みが、農家と観光客の間にできた深い溝を埋めてくれると僕らは信じている」。

哲学の木

 なお、リターンには美瑛産農産物や、PJに賛同する写真家の中西敏貴氏のオリジナルプリントなどがある。クラウドファンディングでの支援金は①農家と観光客がつながる看板の制作②試験的に人気の観光名所3カ所の写真撮影スポットの整備③取り組みを紹介するウェブサイトの構築――に活用される予定。

 ※プロジェクトページには下記から

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