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「味のある街」「久寿餅」――池上池田屋(東京都大田区)

2019年6月8日(土) 配信

久寿餅 1人前390円(税込)▽池上池田屋▽東京都大田区池上4―24―1 ▽tel03(3751)0154。

 先日、東京都大田区にある池上本門寺を訪れた。最寄駅は東急池上線の池上駅。
 
 駅からお寺まではゆっくり歩いて約15分の道のりだ。駅前には「本門寺通り」の看板が。通りにあるのはもつ焼きや寿司、イタリアン、エスニックなど、歴史を感じたり庶民的だったりおしゃれだったりと多様な店々。住宅もある。さらに進むと六郷用水跡や池上本門寺参道の石碑、木格子の家などもあり、歴史的な情緒も感じられる。
 
 長栄山池上本門寺は日蓮宗大本山だ。毎年10月11、12、13日には法要が行われ、とくに多くの参詣者でにぎわう。この総門をくぐると長い石段が参詣者の眼前に現れる。戦国武将、加藤清正の寄進によって造営されたと伝えられるものだ。96段を上り切り、仁王門をくぐると大きく視野が開ける。
 
 境内の松濤園は江戸時代の名作庭家・小堀遠州によるもの。幕末には、この庭園のあずまやで西郷隆盛と勝海舟が江戸城無血開城を決める会談をしたと伝えられている。ほかにも境内には加藤清正の供養塔や、歌人の幸田露伴、プロレスラーの力道山の墓などがある。
 
 新緑の季節で、五重塔が青空に映えて美しかった。歴史ある佇まいに「本物」の風格が漂うこの五重塔は、江戸幕府2代将軍徳川秀忠の乳母である岡部局の発願により建立され、1608年に上棟式が行われたものだ。戦災を免れ、関東に現存する五重塔の中で最古のものとなり、国の重要文化財に指定されている。池上本門寺には、ほかにも宝塔や木造日蓮聖人坐像など、多くの文化財が伝わっている。
 
 さて池上駅から池上本門寺の間で、複数の「くずもち」の店を見かけた。気になって、帰りにその中の一軒、池田屋で買い求めた。池田屋は「久寿餅」と書く。関西を中心に普及している「葛餅」は植物の葛からつくられるが、久寿餅は小麦粉からできている。久寿餅自体には味がついておらず、黒蜜ときな粉をたっぷりかけていただくのが私の好みだ。これからの季節にもおすすめのスイーツだ。池田屋には喫茶スペースがあり、店内でいただくこともできる。 

 (トラベルキャスター)

 

コラムニスト紹介

津田 令子 氏

 

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

 

 

 

 

 

 

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