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「津田令子のにっぽん風土記(50)」「産後うつを減らしたい」~ 埼玉県・小川町編 ~

2019年6月15日(土) 配信

小川町の家の近所で見つけた花
助産師 伊藤麻衣子さん

  92人。これは2015~16年の2年間に、国内で産後1年の間に自殺した女性の数だ。この時期の死亡原因の中で最も多い。ここには産後うつの影響があると考えられている。「核家族化で、赤ちゃんのいる生活をイメージできないまま出産を迎えたり、母親が1人でいる時間が増えたりして産後うつの増加につながっているようです」と助産師の伊藤麻衣子さんは話す。

 
 伊藤さんはこれまで、主に母子のケアなどを担当し、自身も昨年8月に長男を出産した。そんな伊藤さんは今年1月、東京都港区台場地区から埼玉県・小川町に移住した。きっかけは夫の「小川町に引っ越さないか」という言葉だった。夫は昨年転職し、配属の都合で週に3―4回、小川町から車で工場へ通うことに。自然好きの夫は、自然があり物価も安いと移住を検討し始めた。伊藤さんも「田舎」で暮らそうとしたことがあり、都心を離れる抵抗感はあまりなく「頑張っている夫にとっていい環境のほうがいいかな」と考えた。また伊藤さんは復職を考えていたが、港区は保育所の待機児童がとても多く、一方で小川町は待機児童ゼロだった。小川町に見学に行き、「とても穏やか」と感じた伊藤さん。町移住センターのスタッフには子供を保育園に預ける人もいて、詳しい情報を教えてくれた。

 
 引っ越してすぐ、近くに知り合いのいない状況で、息子がインフルエンザにかかり、自分も体調を崩した。そして産後うつまではいかないが、その傾向があると気づいた。「思いとどまれたのは、産後うつに関する知識があったから」。支えになったのは小川町の保育園だった。先生は息子の成長に気づき、悩みも聞いてくれた。「家族以外に相談できるネットワークができ、子育てや人生が楽しくなりました」。

 
 魅力は他にも。「小川町では近所の庭で十分きれい。春ってこんなに花があると気づいたり、テントウムシがたくさん飛ぶのを見たり、自然が身近になって、世界がカラフルになりました」。

 
 自分の体験から、産後うつを減らす活動への思いがより強くなったが、就職先はなかなか見つからない。今はウェブサイトに産後うつに関する寄稿をするほか、オンラインで講座を企画運営したいと考えている。一方、小川町の人から「これも縁だから、小川でも活動したら」と言われることも。「町の人に本当によくしてもらっているので、それもいいかなと思い始めました」。伊藤さんの活動は広がりそうだ。

 

コラムニスト紹介

津田 令子 氏

 

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

 

 

 

 

 

 

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