〈旬刊旅行新聞6月21日号コラム〉魅力度47位の茨城県だが…… 「有名観光地の景色は世界中同じ」
2019年6月21日(金) 配信
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(多田計介会長)の第97回全国大会が6月5日、茨城県水戸市で開催された。全国大会の前日には、大洗町の大洗ホテルで2019年度の通常総会も開かれた。
大洗町に行くのは、約2年ぶりだった。2年前の夏、大洗港から北海道の苫小牧港まで商船三井フェリーの「さんふらわあ」号に乗ってオートバイで北海道一周の旅をして以来のことで、再訪に胸を膨らませた。
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もう一つの楽しみは、大洗海岸に構える「里海邸 金波楼本邸」の主人・石井盛志さんと会えることだった。
1年前の5月に、石井さんと、日立・太田尻海岸のビーチに面した「うのしまヴィラ」の館主・原田実能さんとの対談を本紙1面で行った。テーマは「茨城の海辺の〝独創的〟な小宿」だ。自画自賛だが、とてもいい対談企画だったと思う。
茨城県は太平洋に面した200㌔近い海岸線を有する。安っぽいリゾート地のように、観光客に迎合した海には一切興味はないが、大洗の海は「脳に纏わりついた雑念を洗い流す」には最も適した海である。
「里海邸 金波楼本邸」は保養地・大洗海岸の自然環境を生かした「別荘宿」をテーマとしており、石井さんが創造しようとする〝透明感〟のある世界観に、いつも刺激を受けている。
今回の総会会場では、エントランスで石井さんと、奥様の文佳さんも笑顔で迎えていただき、うれしかった。少し到着が早かったので、大洗磯前神社に参拝し、岩礁に屹立する鳥居と広大な海を眺めていた。
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そのような魅力あふれる茨城県であるが、ブランド総合研究所が毎年発表する都道府県魅力度ランキングでは、13―18年まで6年連続で最下位の47位に位置している。2日間の茨城県滞在中、何度も「魅力度全国47位の茨城県」という自虐的なあいさつを耳にした。
ちなみに18年の魅力度ランキング上位は①北海道②京都府③東京都④沖縄県⑤神奈川県――の順で、〝メジャー〟な都道府県が占めている。
一方、下位は47位が茨城県、46位が徳島県、45位が佐賀県。確かに上位の顔ぶれと比べると、地味な印象を受ける。しかし、魅力が劣るかといえば、それは別問題だ。
温泉で例えるならば、草津温泉や下呂温泉、有馬温泉、別府温泉などは多くの人が認める魅力的な温泉である。でも、自分だけが知っているような小さな雰囲気のある秘湯は、世間的なランキングが低くても、その人にとっては魅力度1位である。
私は中途半端に上位のエリアよりも、茨城県や徳島県、佐賀県を旅したいと思う。
極論だが、「有名観光地の景色は世界中どこも同じ」と感じている。
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総会後は大洗ホテルに宿泊し、翌朝は全旅連が手配してくれていた大型バス2台に分乗し、水戸の日本最大規模の藩校「弘道館」や、日本三名園の1つ「偕楽園」を訪れた。徳川御三家の歴史が色濃く残る街並みは、派手さはないが、しっかりと文化の年輪を刻んでいた。
大会会場の水戸プラザホテルでは、うのしまヴィラの原田さんとも再会できた。1年前の石井さんとの対談の舞台となった太田尻海岸の海の表情は、「世界中どこにもない景色だった」と、妙に懐かしく思い出された。
(編集長・増田 剛)