「味のある街」「沖縄そば」――さわのや もとぶ店(沖縄県・本部町)
2019年7月4日(木) 配信
沖縄県で人気観光地の一つが本部町にある沖縄美ら海水族館だ。那覇市内から車で約2時間、レンタカーで訪れる人も多い。その本部町の名物は沖縄そばだ。有名店が多く、とくに県道84号線沿いには沖縄そばの店が続く。出汁にカツオが贅沢に使われているのが特徴である。先日沖縄を訪れたとき、水族館の帰りに寄り道をして、沖縄そばを食べに行くことにした。
すでに午後になっていたため、まだ営業している店を探し、見つけたのが「さわのや もとぶ店」。店に向かう途中に市場があった。外からは海産物の店などしか見えなかったが、中に入るとお洒落な陶器の店やカフェもあった。若者も興味を持ちそうな、レトロな雰囲気だ。
店の前には英語の貼り紙もある。外国人客も来るのだろうか。そう思いながら店に入ると、確かに私たちの後に欧米系のカップル、その後にはアジア系の家族連れがやってきた。店内のメニューにも英語が書かれていて、指をさしながら注文している。店員さんも慣れたようすだ。この店のそばは「木灰そば」といい、ガジュマルなどの木を燃やしてできた灰を水に浸した上澄み液をかん水の代わりにそばに使う。
これにより、強いコシや独特の風味が生まれる。私が頼んだ「沖縄そば」は、かまぼこと三枚肉、ネギというシンプルな具材で、出汁のカツオの風味や、麺と出汁、具のバランスで生み出される奥深い味を堪能することができた。他にも軟骨ソーキそば、ヨモギそばなどのメニューがある。
食べていると、今度は日本人のお客がやってきた。近所の方が、持ち帰りのメニューを取りに来たようだ。ふと気付いて店内を見回すと「ローストチキン予約受付中」と書かれたちらしがあちこちに貼られている。この日はクリスマスだった。
カップルは楽しげにそばを味わい、家族連れも子供にそばを取り分けながら食べている。そしてローストチキン受け取りの客が次々にやってくる。外国客にも地元の人にも愛される店。独特の情緒の育つ本部町は、水族館を訪れるだけで素通りするにはもったいない場所だと知った。 (トラベルキャスター)
コラムニスト紹介
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。