「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(102) 内線電話に問われるおもてなし力 滞在のあとの今日一日を
2019年7月7日(日) 配信
客室からフロントに掛かってきた電話が、会話の途中で突然切れました。「あなたが受け手だったら、どんな対応をしますか」。受講者からは「途中で電話が切れてしまい申し訳ありません」と、こちらから内線をかけ直すという回答でした。
では、応対が上手くいかずお客様を怒らせてしまった電話を保留にして、戻ってみるとその電話が切られていたら。やはり「すぐにかけ直します」。では、その折り返しの電話にお客様が出なかったら、「客室に行ってお詫びをする」。
こうした基本的な行動が、現場では当たり前のようにとられていないことがあるのです。
この質問をしたのは、私自身があるホテルに滞在した時に電話をしたからです。いくつかの質問に、フロントスタッフは分からないという返事を繰り返すばかりで、いきなり電話を保留にされました。しかもなかなか電話に戻ってきません。そんな時に携帯電話に着信があり、そのまま内線電話を切ってしまったのです。
そのあと、折り返しの電話はありません。翌朝のチェックアウト時にも、それに触れる会話はありません。電話の受け手は、電話が切れた時点で用事は終わったと理解したのか、引き継ぎもなかったのです。
ただ、お客様が意思を持って切ったのではなく、突然体調に変化があり倒れる時に切れていたら、大変なことです。
朝食付きプランを予約し、朝食券を渡していたのにチェックアウト時に朝食券がキーケースに残っていたとします。多くのホテルでは、そのまま回収してチェックアウト完了です。「朝食はこれから取っていただけますか」と尋ねるホテルは本当に少ないのです。
わざわざ食事付きのプランを予約したのに、食事を取らないのは理由があるはずです。そこに意識を向けなくてはなりません。体調を崩したのかもしれません。寝坊をして急いでいるのかもしれません。
その場合には、せめて水分補給のために水をお渡しする、あるいはタクシーを呼ぶなどお手伝いできることはあります。滞在中に不快感を持たれての出発ならば、最後のリカバリーのチャンスを逃してはいけません。よくあることだからとルーチンで処理をしてはいけないのです。
私たちの仕事は、お客様に快適な滞在を提供するだけではなく、滞在のあとも元気に気持ちよく仕事をしていただけるよう、応援をすることも大切な仕事なのです。
「行ってらっしゃいませ」と声を掛けるのは、またお帰りいただくことを期待してのリピーターへの言葉だけではなく、滞在のあとの今日一日を、元気に過ごしてもらうためのエールなのです。
コラムニスト紹介
西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。
興味深く読ませていただきました。まず最近はホテルに限らず最初に清算をお願いされることがしばしばです。うがった見方かもしれませんがこれは店側の都合が大だと推察し、賛成しかねます。と同時に清算こそが最後の印象付けと商取引の最大イベントではないでしょうか。この時によい印象を与えるのとそうでないのとでは、天と地ほどの違いがあります。もちろん西川さんお仰るいろいろなチェックに使える最後のチャンスでもあります。精算、精算機会、大事だと思います。