東京で安心な旅を、4月、東京UTC設立へ
日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワーク(鞍本長利理事長)と高齢者・障がい者の旅をサポートする会(久保田牧子理事長)は昨年12月16日、今年4月に「東京ユニバーサルツーリズムセンター(東京UTC)」を設立することを目指し、東京都内で第1回目の設立準備会議を開いた。東京UTCは、2020年の東京五輪・パラリンピック開催決定を契機に、障がいを持つ人や高齢者に安心して旅を楽しんでもらうためのネットワークの構築や情報発信をするのが目的。会議には、東京都内のホテルや輸送機関の関係者ら約40人が集まり、意見交換した。
【飯塚 小牧】
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あいさつに立った鞍本氏は「2020年の東京オリンピック・パラリンピックには、50年前と比較にならないほど多くの人が国内外からやってくると思うが、例えば、車イスの人が東京に1泊して観戦に行くとなると、宿泊施設や会場までのアクセスなどさまざまな問題がある。今、各々が取り組みをしているが、これがネットワークとしてつながっていないため、外から問い合わせる機関がない」と設立に向けた主旨を説明。集まった関係者に「パラリンピックに参加する障がい者アスリートや応援にきた障がいを持つ人が安心して滞在できる東京を作ってほしい」と訴えた。
また、オブザーバーとして参加した、観光庁でUTを担当している観光産業課の上井久仁彦企画調査係長は現在の取り組みについて「地域の受入拠点の体制づくりの強化とUTの旅行商品の供給促進の調査を行っている」と報告。「受入拠点づくりなどは多くの協力がなければ成り立たない。今回、このような動きが東京ででているのは非常に喜ばしい。ぜひ、連携を深め、実現に向けて取り組まれることを期待している」と述べた。
意見交換では、各自が取り組んでいるユニバーサルの現状などを報告し合ったほか、それぞれが抱える課題や東京UTCに期待することを述べた。そのなかで、日ごろから障がいを持つ人と接している理学療法士の友清直樹氏は「患者さんは東京五輪まで何とか元気でいたいという声が大きく、子供のなかには、『パラリンピックにでたい』と夢を持つ子もいる。また、旅行はリハビリの大きな動機になる」と今後への期待を語った。一方、作業療法士の小林毅氏は率直な意見として「ホテルのバリアフリールームは大多数に合わせた対応になるとは思うが、例えば両手のない人は手すりの付いたバスルームがあっても使えない。個別の障がいも一緒に共有し、色々な人が外に出やすい環境を作っていけたら」と語った。
また、障がい者の移動には排尿の問題が欠かせないと訴えたユニ・チャームヒューマンケア社長の白井光比呂氏は、同社が開発した尿引ロボ「ヒューマニー」を紹介。8時間までなら、オムツ替えの心配がなく、移動に便利だ。しかし、航空機に乗る際は電子機器として捉えられ、航空会社から問い合わせがあることもあり、改めて障がい者の旅行にはさまざまな事業者の連携が必要だと分かった。
さらに、京王プラザホテルで長年、ユニバーサル対応を行い、現在は京王プレッソインチェーン本部販売促進部長を務める中村孝夫氏は、ユニバーサルルームの設備や従業員へのソフト面の教育を紹介したうえで、東京UTCに期待することとして「観光マーケットを掘り起こしてほしい。ホテルにバリアフリールームが少ないのは作っても空いているから。もちろん、おもてなしの心はあるが、ビジネスなのでそれだけでは難しい」と語り、需要の開拓がUTを促進する鍵だと示した。
今後、同会は規模を縮小し、月1回程度開く予定で、4月東京UTC設立を目指す。