鉄道のネット対応の遅れが市場全体のネット予約率に影響、WITJapan2019
2019年7月11日(木) 配信
メタサーチのベンチャーリパブリック(柴田啓代表)が事務局を務める、オンライン旅行産業の国際会議「Web In Travel Japan(WIT)」が7月4、5日に東京都内で開かれた。同会議はシンガポールから始まり、日本では東日本大震災後の2012年から毎年行っている。このなかで、日本のオンライン旅行市場について、フォーカスライトジャパン代表の牛場春夫氏は、「日本は鉄道のオンライン予約化への対応が遅れていることで、市場全体のインターネット予約率を下げている」と指摘した。
牛場氏は同社の調査資料から、販売高から見た日本国内の旅行市場のネット予約率を41%(販売高約4兆円)と報告。「ネット予約率はアジア太平洋地域(APAC)では45%、欧米だと50%を超えている。日本は世界第3位の観光立国だが、ネット率は一見すると低い。日本は鉄道大国で非常に大きな市場を持ちながら、鉄道のネット率が極めて低い現状がある。ここでは新幹線の予約率26%を鉄道のネット予約率として紹介するが、これが全体を押し下げる原因だ」(牛場氏)。ただ、今後は新幹線のチケットレス化も進行していることから、徐々にネット予約率は上がるとみる。
他方、鉄道を除くと世界平均と遜色なく、とくに航空券だけでみると世界平均を上回るという。「日本の国内線は年間1億人を運んでおり、これは世界第4位。1年前のデータでは約70%がネット予約化されていたので、恐らく今は80%近いだろう。団体を除けばほぼ100%。各社のトップも『ほぼ天井』と語っている」と解説した。
セグメント別にみると、宿泊施設は国内オンライン旅行市場シェアで43%を占め、航空の34%を超える占有率だが、内訳はタイプ別に大きく異なる。ビジネスホテルのネット予約率は約55%だが、旅館は30%に満たない状況だ。一方で、インバウンドは全体の3分の2に当たる2千万人が日本の宿をネット予約しているという。「これを支えているのが外資系OTA(オンライン旅行会社)だ」と紹介。今後、国内の市場でも外資系OTAがさらに成長するとの見方を示した。
□国内OTA4社のトップが登壇
例年、WITでは国内OTAのトップが一堂に会すプログラムを実施している。ベンチャーリパブリックの柴田氏が一問一答形式で4社のトップに切り込んだ。
JTB個人事業本部Web販売部長の盛崎宏行氏は、昨年度決算で赤字を計上したことについて、Web部門の課題を問われると「JTBのオンライン化が市場の成長に追い付いていないことは確か。開発や運用、人材確保、合意形成などすべてにおいてスピードがない。今後は組織のスリム化でスピード感を持たせるので期待してほしい」と意気込んだ。
また、現在加熱しているキャッシュレス決済競争が今後数年、旅行業へどのような影響を与えるかについて、楽天執行役員でトラベル事業長の髙野芳行氏は、「キャッシュレス化で売上が上がることは分かっている。旅館や観光施設も早めに導入した方が利益は上がる。OTAとしても事業領域を旅ナカまで拡大し、現地決済もシームレスにできる環境を作れば売上が伸びる」と考えを述べた。
インバウンド事業での外資系OTAとの差別化は、リクルートライフスタイル旅行領域担当執行役員の宮本賢一郎氏が「国内宿泊施設の在庫数と網羅性が強み。どう顧客を連れてくるかが課題だが、海外のOTAや旅行会社と連携を強めていきたい」と語った。
また、マーケティングにおける過去1年間の変化や進展を問われた、一休社長の榊淳氏は「サイトに訪れてからのウェブ接客に力を入れている。ページビュー単位の予約意向のデータがそろってきている」と自信を見せた。