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〈旬刊旅行新聞8月11・21日合併号コラム〉日本人の国内旅行活性化は進まない 「観光地は外国人旅行者ばかりだった」

2019年8月18日
編集部:増田 剛

2019年8月18日(日) 配信

中国本土からの個人旅行の停止にも関わらずにぎわう台湾・九份


  8月上旬は台湾に滞在していた。8月1日に、中国本土47都市から台湾への個人旅行が停止された直後であり、現地・台湾の交通部観光局も、その対応に追われている時期だった。

 
 台湾のホテルや観光関係者の何人かに「影響はどうか?」と聞いてみたが、「それほど大きな影響はない」と口をそろえて答えていた。来年1月に実施される総統選挙までの期間限定の措置ではないか、と動揺も小さく冷めた口ぶりである。このあたりに台湾の強かさを感じる。

 
 香港も「逃亡犯条例」の改正に抗議するデモが大規模化している。香港国際空港の一部が占拠され、運航がストップするなど、夏休みの旅行客にも大きな影響を与えている。激動の国際情勢を、日本からの視点だけで眺めていては、正しい判断は難しい。観光に携わる者として現地の空気を感じることは、とても大事なことだと思っている。

 

 
 日本と韓国の関係性も、悪化の一途を辿っている。両国を結ぶ航空路線が相次いで運休するなど、観光へ影響も大きく報じられるようになった。

 
 とくにLCC(格安航空会社)が乗り入れ、韓国から多くの旅行者が訪れていた地域は、旅館やホテルの稼働率が低下するなどの動きも見られる。

 
 LCCの地方空港乗り入れは、地域活性化に大きく貢献している。近隣諸国に気軽に訪れることが可能になり、日本人がほとんど訪れない場所に外国人旅行者が押し寄せる光景も増えてきた。双方向の交流拡大や、経済効果も期待できる。

 
 しかし、世の中はそう単純にできていない。「これまで日本人が訪れなかったところに、外国人旅行者が急激に増える」現象を素直に受け入れるのは、あまりに無邪気過ぎやしないだろうかと危惧してしまう。

 

 人口減少時代を迎え、とりわけ地方部では過疎化が深刻化してきている。「定住人口が減少している分を、交流人口の拡大によって補うことが可能」との考え方を基に、国は観光立国の推進を政策の柱としてきた。

 
 まずは観光で訪れる旅行者を増やし、それをきっかけに移住・定住につなげたいと、「住んでよし、訪れてよし」のまちづくりに取り組む自治体も増えてきた。

 
 だが、実際は効果がてきめんに表れている地域は限られている。もちろん、すぐに結果が出るものではない。数十年、百年単位で考えなければならない問題だからだ。

 
 幸か不幸か、この数年、訪日外国人旅行者数は飛躍的に伸び続けている。LCCやクルーズ船が到着し、昨日まで誰もいなかった場所に、外国人旅行者が続々と訪れるようになれば、「万事順調」と錯覚してしまいがちだ。今はまさにインバウンド「バブル」状態である。交流人口の拡大という、最も難しい問題が、訪日外国人の飛躍的な増加によって、〝一夜にして〟実現したように感じるのも無理はない。

 

 
 観光に関する話題はインバウンドに関することが大部分を占める時代となった。国も外国人旅行者にはさまざまな優遇をしながら、日本人の国内旅行活性化に対しては、あまりに腰が重いのがずっと気になっている。

 
 「観光地に行ったら、日本人はほとんどいなくて、外国人旅行者ばかりだった」という声を聞き始めて久しい。これは正常な観光立国の姿だろうかと感じている。

 

(編集長・増田 剛)

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