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「観光立国推進」へ懇談会 全旅連と旅行業5社トップ

2019年8月19日
編集部:木下 裕斗

2019年8月19日(月) 配信 

懇談会のようす

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(多田計介会長)は7月17日、旅行業大手5社のトップらを招いて、「観光立国の推進に向けた懇談会」を開いた。昨年6月の定款変更により、全旅連は観光に関するビジネスも可能となった。1万軒を超える、中・小規模旅館への誘客拡大も大きな課題となるなか、“共存共栄”の関係を築いてきた旅行会社と、訪日・国内旅行の活性化へ意見や情報を共有した。多田会長は「今後も継続して対話できる場を設けたい」考えだ。

 懇談会には、全旅連から多田会長をはじめ、正副会長ら幹部14人がそろった。旅行会社からは、JTBの髙橋広行社長、日本旅行の堀坂明弘社長、東武トップツアーズの坂巻伸昭社長、KNT―CTホールディングスの田ヶ原聡常務、農協観光の大野哲也常務の5氏が出席し、豪華な顔ぶれとなった。

 多田会長は冒頭、送客側の旅行会社トップと一堂に会し、さまざまな諸問題を話し合えることに謝意を述べた。

 全旅連側から旅行会社各社には、観光立国推進基本法に基づく訪日外国人旅行と国内旅行の誘客、とりわけ中・小規模旅館への誘客拡大について事前に質問項目を投げ掛けており、5社のトップが順に回答するかたちで進めた。

JTB「訪日客の地方分散を」     
 JTBの髙橋社長は「訪日旅行者がゴールデンルートに集中し、飽和状態にある」点を課題に挙げた。訪日客の消費拡大には「地方分散」が不可欠との考えを示し、「地方の魅力発信と、新しい需要創出が求められている」と語った。

 国内旅行の課題として、観光コンテンツのマンネリ化を指摘。長野県・阿智村の星空観光や朝市見学など、宿泊を伴う仕掛けの必要性を強調した。

 中小の宿泊施設について、パンフレットに載せるには客室数が少ないため、「ウェブでの商品展開で対応したい」としたほか、“個性の打ち出し”を促した。同社では「大人の隠れ家」や「秘湯」などテーマ性の高い商品を展開していることを伝えた。

日本旅行「都市部集中は全旅連が結集して解決」
 日本旅行の堀坂社長も訪日、国内旅行ともに「地方分散が必要」と述べた。

 都市部集中による客室不足問題の解決方法としては、「全旅連の力を結集すれば地方での受け入れも可能」と語った。2次交通の確保が難しいエリアでは、宿泊施設が共同で送迎する仕組みを作るよう提案した。

 インバウンドの動向として、中国でスキーブームが到来すると予見した。背景にあるのは22年に開かれる北京冬季五輪で、中国政府がスキーを推奨しているためだ。「この需要に対しては、外国語を話せるインストラクターが必要」と話した。

 一方、国内で多く見られる無料の観光スポットについては、「受け入れ側もお金が落ちる仕組み作りを構築するべき」と提言した。

 東武トップツアーズ「誘客施策の見直し促す」
 東武トップツアーズの坂巻社長は「いかに旅行者にお金を落としてもらうか」を前提に、「滞在時間を増加させ、人を呼び込む施策を自治体などと共同で見直す」ように提案した。「地域の身近な食べ物などで観光客を呼び込める」考えを示し、「自治体などが消極的であれば、我われ旅行会社を使ってほしい」と呼び掛けた。

KNT―CT「宿と魅力的なコンテンツを共有」
 KNT―CTホールディングスの田ヶ原常務は国内旅行について「魅力あるコンテンツ作りを宿泊施設と共有することで、地域への誘客をはかりたい」と述べた。

 このほか、中小の宿泊施設は、「貸切」可能な宿とは個別の契約を結び、ニーズの改革を推進する方向性などを紹介した。

農協観光「こだわりの宿で中小規模旅館へ送客」
 農協観光の大野常務は中・小規模旅館への誘客について、同社プランの「こだわりの宿」を強化する方針を示した。参画する宿泊施設には、積極的に送客する姿勢だ。とくに、旅館の貸切プランには力を入れており、「イベントを開いたり、芸能人を呼ぶなどしてアピールしたい」としている。
                            □
 旅行各社の意見に対し、多田会長は「観光立国推進に向けて、年1回はこのような懇談会を設けたい」と意気込んだ。次回は全旅連側も発言する意見交換会の形式で行い、より多くの時間を設けたい構えだ。

 

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