全旅連、地方観光の受け皿を 支援制度創設へ要望書
2019年8月27日(火) 配信
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(多田計介会長)は8月26日、全旅連常務理事・理事合同研修会を開いた。会員のうち7割以上を占める中小施設の総合的な支援制度の創設を要望する「要望書」を採択。訪日客が地方部に訪れ、消費して経済循環を生む「地方観光」が重要とし、この受け皿となる中小施設の支援制度化を進めていきたい考えだ。
同日、中小宿泊施設観光総合対策委員会(井上善博委員長)が制度概要などを会の場で発表した。同委員会は2019年6月11日に設立。中小施設は部屋数が50室以内の施設だと定義づけた。全旅連会員1万5296施設のうち、中小施設は1万1232施設で全体の73%と大半を占める。
同委員会が中小施設を対象に行ったアンケートによると、8割が自館が老朽化していると答えた一方、7割が改装の予定なしだった。資金調達が急務となっている。
ただ、バブル時の投資とその後の長期不況は、中小施設事業者の経営を圧迫した。このため投資を受けられないことがあり、資金調達が困難となっている状況だ。
同委員会の竹村奉文(関東学園大学経営学部経営学科教授)アドバイザーは「(東京五輪後)店をたたむところも多いのではないか」と危惧する。
これらを踏まえ、同委員会では中小施設が多い地方部での「地方観光」の総合対策を進める。
9月中に5地区程度のモデル地区を選び、「観光総合対策計画(仮称)」を策定。自治体と観光庁、全旅連(同委員会)などで委員会を設立し、モデル効果検証後、対策事業の支援制度化をはかる。
財源予算は国などに要望していく考え。1億円規模の事業にしていきたいという。
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同日は観光庁を招いた講演会も開いた。観光産業課の多田浩人課長は「宿泊業の現状及び今後の課題」について講演した。
17年に、宿泊業の就業者は60歳以上の高齢者が3割を占めた。多田課長は今後、「この層の退職による大幅な就業者数の減少が見込まれている」と指摘。外国人材を含む人材補填の取り組みが急務だとした。
一方で、高齢化社会は日本だけで進んでいるわけではない。
外国人旅行者数上位国の高齢者(65歳以上)の人口推移は、2020~30年で中国が40%増、韓国が52%増、米国が23%増、タイは50%増と推計されている。20年以降は世界的に高齢化が進むことが分かる。
訪日客をみれば、全体のうち65歳以上は約168万人(18年)だったが、13年からの5年間で約100万人増えている。
「これからは日本人の高齢者だけでなく、外国人旅行者の高齢者をいかに受け入れていくかという視点も必要になる」(同氏)と理事長らに呼び掛けた。
このほか、観光地域振興部の村田茂樹部長は「観光先進国を目指して」をテーマに講演。現状報告から今後の観光政策の方向性などを話した。