アジフライと軍港の街 松浦と佐世保を巡る旅 長崎県
2019年9月12日(木) 配信
長崎県は7月31日―8月2日、松浦市と佐世保市でプレスツアーを行った。松浦市はアジの漁獲量で日本一を誇り、2018年2月には「アジフライの聖地」を宣言。「アジフライ」を通して、交流人口を増加させたい考えだ。一方、佐世保市は今年、佐世保鎮守府開庁から130年を迎え、護守印めぐりなどで誘客に努めている。福岡県を中心に九州各県からの観光客が多いため、同県は「首都圏と関西圏からの観光客も呼び込みたい」と話す。
□アジフライの聖地宣言
松浦市は2018年2月、アジの漁獲量日本一を踏まえ、アジフライで観光客を増加するため「アジフライの聖地」を宣言した。同市は3月、アジフライを提供する29店舗を掲載する「松浦アジフライ食べ歩きMAP」を作成した。
各店舗が使用するアジは、遠洋で捕れた甘くて酸味のあるものと、近洋で捕れた脂のノリが強いものを使い分ける。ソースもタルタルやウスターなど、店舗ごとに異なる味を使用することで差別化をはかっている。
アジを刺身や焼き魚として提供する店舗もある。とくに、刺身は九州の甘い醤油で食べることにより、地域ならではの味をより一層楽しめる。
食べるだけではない。松浦市場では、事前に申し込めば、陸揚げのようすや、サイズごとに仕分けするアジの選別を見学できる。船からフォークリフトに陸揚げするようすは圧巻だ。選別されたアジが入ったケースは、5段ほどに積み重ねる。積み重ねたケースは複数あり、アジの漁獲量日本一の様相をうかがい知ることができる。
21年度には、新しい市場の供用を開始する予定だ。事前の申し込みがなくても見学可能で、セリのようすも観光客に開放する。
□軍港として栄えた佐世保
佐世保港は1889年、旧日本海軍が佐世保市に西域を守る目的で軍港を建設。戦後は海上自衛隊とアメリカ軍が港を使用してきた。両者は現在、さまざまな軍事施設を建設。佐世保市は一部を観光資源として活用している。
このうち自衛隊敷地内の施設は、日本遺産を巡る海軍さんの散歩道徒歩ツアーに申し込むことで見られる、特別な観光地となっている。
同施設内の見どころは、旧日本軍が第2次世界大戦当時、軍事機密としていた「旧佐世保鎮守府防空指揮所跡」だ。場所は基地内の端で周辺はひっそりしている。高射砲台の指揮を執り、港を守るうえで、重要な役割を果たした。当時勤めていた人は、家族にも、勤務地を秘密にしていたという。
このほか施設内には「旧佐世保海兵団第8号庁舎」や「護衛艦くらま」の食堂を再現したレストランもある。同レストランでは、旧日本軍のレシピを基に作ったカレーを提供する。
現役の艦船も観光資源として活用している。海からは軍港クルーズを通して、現役のアメリカ軍と海上自衛隊の艦船などを間近に見られることから人気が高い。
今回のプレスツアーでは安栄丸水産が運航する「SASEBO軍港クルーズ」を利用した。
軍事的なことを知らない人もクルーズを楽しめるように、ガイドが各船舶に搭載してあるミサイルや機関砲の用途を説明する。派遣先と任務内容なども詳しく教えてくれる。
同クルーズでは、陸上施設も解説する。弾薬庫や給油施設などが中心で、山に囲まれた佐世保独特の地形を軍事的に有利になるように生かした過程も案内する。
□アメリカ軍との交流が深い
佐世保市の中心街は、アメリカ軍の軍人との関係が密接だ。「他の駐留地と比較して、佐世保はアメリカ軍との交流が深い」(長崎県東京事務所の吉富達司次長)と話す。
商店街の「さんくるシティ4〇3アーケード」では、アメリカ軍の利用者が多いことを受けて、一部店舗で「米ドル」での支払いが可能だ。レートは店によってさまざまで、入口にレートを貼る店舗もある。
夜には外国人バーにアメリカ軍の軍人が来店する。日本人も飲食可能であり、アメリカの軍人との会話を楽しめる。
同ツアーでは外国人バーの「プレイメイト」で、アメリカ軍において医療系の仕事をする人に会えた。アメリカ海軍式の乾杯の方法を、実践するなど文化交流も行った。
□日本唯一の3部隊カレー
「佐世保の自衛隊グルメの特徴は、陸上自衛隊と海上保安庁、海上自衛隊の陸上部隊のカレーを日本で唯一楽しめること」(吉富次長)と語る。
海上自衛隊のカレーは、明治時代の日露戦争が始まりだ。当時は、白米中心の生活でビタミンが不足し、脚気で亡くなる人が多いことから、野菜を多く使用したカレーを導入したという。
自衛隊のカレーのレシピを所有する市内の19部隊は、現在でも野菜を多く用いる伝統を引き継いでいる。同レシピを19店舗に提供。各店舗が再現し、売り出している。
キャンペーンも実施中だ。20年3月31日まで自衛隊カレーを注文した人には、各部隊オリジナルのピンバッジをプレゼントする。さらに、10個集めた人にはコースターを、すべてのピンバッジを集めた先着100人には、シリアルナンバー入りの専用バッジフレームを贈呈している。