test

〈旬刊旅行新聞11月1日号コラム〉壊すのは「一瞬」でできる 大切に守り続ける文化に敬意を表す

2019年11月1日
編集部:増田 剛

2019年11月1日(金) 配信

変革しなければならないもの」と、「大切に守り続けなければならないもの」の見極めが大事(写真はイメージ)

 天皇陛下の即位を国内外に宣明する即位礼正殿の儀が10月22日、皇居内で行われた。世界中の皇族や国家元首らが参列し、海外メディアも高い関心を持って今回の即位礼を報じた。

 
 私もテレビの前で中継を見ていたが、神武天皇から今上天皇まで126代続いてきた歴史の重さを改めて深く心に思った。
 
 アメリカ合衆国の建国は1776年で、まだ243年である。中華人民共和国も長い歴史を持ちながら、今年建国70周年を迎えたばかりだ。
 
 レベッカの名曲「MOON」の歌詞に、「壊してしまうのは一瞬でできるから大切に生きて……」という部分があるが、まさにその通りである。「大切にする」のは難しいが、壊してしまうのは、「一瞬」でできるのだ。「いくらお金があっても買えないものは歴史」としばしば語られる。日本は長い間、文化を大切に守り、今も現在進行形で継続している。世界中の賓客がそのことを深く理解し、敬意を表していただいたことに誇りを感じた。
 
 日常生活でも歴史の重さに触れる機会は多い。道路を〝我が物顔〟で走る最新型で、ハイスペックの高級車はカッコイイ。しかし、50年、70年、100年の年輪を刻んだ現役のクラシックカーの前では、“ピッカピカの1年生”に過ぎない存在であることが明白になる。歴史を刻んだ現役は貴いのだ。
 
 旅先でも、歴史ある建造物やホテルなどは、旅人から大きな敬意を受ける。さまざまな困難が続く歴史の中で、簡単には壊さずに、「生命」を守り抜くことの大変さを、人は無意識のうちにも知っているからだ。
 
 人間関係でも同じだ。苦労を共に乗り越え長年連れ添った夫婦や、友人、師弟関係にも歴史を感じることがある。昨日や、今日知り合った人には存在しない見えない絆がある。生身であるから、良好な人間関係を維持していくには、計り知れない努力が必要である。飲食店や旅館・ホテルも、まっさらな“一見さん”よりも、昔からの良質な関係を築いてきた、信頼ある客を大切し、優先させる。
 
 ただ古いものが何でも素晴らしいと言っているわけではない。古くさい慣習をやめて現代に合ったものに変えていくことは、とても大切なことである。
 
 例えば、今後本格的に議論される「憲法」などもそうである。古い条文に縛られて、新しい時代に対応したくても雁字搦めで身動きができないことほど、バカげたものはない。
 
 時代は常に進化し続けている。自分たちの価値観に合うものに常にアップデートし続けていく努力を惜しんではいけない。これこそ真の革新である。
 
 「変えなければならないもの」と、「大切に守り続けなければならないもの(本質)」の見極めが大事である。ここを見誤ると、せっかく育み刻んできた大切な文化や、歴史が無残に寸断されてしまう。
 
 今号の1面特集「いい旅館にしよう!」プロジェクトは、「お客様への接客を大切にする」という本質を一貫して守るために、「バックヤード部分の負担軽減へ、改革し続ける」宿の取り組みを探るシリーズだ。
 
 これとは反対に、バックヤードの悪しき慣習に手を付ける努力を怠りながら、企画やプランなど表層だけ常に新しいものに変え続ければ、宿文化の一貫性を失い、顧客も相手にしなくなる。
 (編集長・増田 剛)

いいね・フォローして最新記事をチェック

コメント受付中
この記事への意見や感想をどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。