「味のある街」「ミラカン」――ヨコイ錦店〈直営店〉(愛知県名古屋市)
2019年11月9日(土) 配信
みそカツや手羽先、天むす、ひつまぶしに味噌煮込みうどんなど名古屋周辺が発祥の料理は数多い。その1つに「あんかけスパゲッティ」というユニークな麺料理がある。地元では半世紀以上愛されてきたグルメで、近年注目度が急上昇中だ。
先月、NHK文化センター名古屋教室主催の「旬な旅・味な旅・旬な手みやげ」の講師に招かれ、ヨコイの「ミラカン」を食べることができた。
ミラカンって何? 初めて聞いたときは想像もつかなかったのだが、ミラネーゼ(肉類)+カントリー(野菜類)を合わせた、あんかけスパゲッティだけに使われるメニュー名なのだ。まろやかな酸味と、胡椒辛さがバランスよくミックスされたこのソースは、「これぞあんかけスパゲッティ」と言える定番の味と絶賛されている。具は、ウインナー(赤ウインナー)、ハム、ベーコン、オニオン、ピーマン、マッシュルームの6種類。
初めは「何だろう? この味」と思っても、何度か食べているうちにやみつきになる不思議な一品だ。「スパゲッティ」という名がついているのに、イタリアのパスタとはまったく異なる。茹で置きした太いスパゲッティを、焼きそばのようにラードや植物油で炒め、中華料理の餡のような粘りとコクのある辛味の効いたソースでまぶした名古屋ならではの料理なのだ。この辛味はたっぷり胡椒を使うためとのことだが、あくまでも味のベースはトマト味。
かなりボリュームがあるため若者を中心に男性に人気があるというが、訪れた日は、開店前から一番乗りの私たち4人のほか観光客と思われる女性グループや、地元の常連のご夫婦などが列を作っていた。
そうそうミラカンの歴史についてもふれておこう。1960年代に中京圏で生まれ、70~80年代はそれほど広まっていなかったのに、2000年代以降になって人気が高まってきた。今では独特の食文化として、誰もが知る名古屋を代表するまでになっている。名古屋を中心に専門店が多くあるほか、多くの喫茶店でも味わうことができるので、店ごとの味比べも楽しい。
(トラベルキャスター)
コラムニスト紹介
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。