「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(106)楽しみながら創造するおもてなし 「根っこさえ共有できていれば」
2019年11月4日(月) 配信
福島県白河市で9月28、29日に開かれた日本ご当地キャラクター協会主催の「しらかわキャラ市」に、当社が事務局を務める「日本ご当地タクシー協会」も参加しました。日本各地から加盟のご当地タクシーやタクシーの屋根に載せる「おもしろ行灯」を会場で展示しました。
そこで、各地から駆け付けたタクシードライバーの行動に感動しました。初参加で、どのような催しをするのか、各ブースでできることは何なのか。事前連絡で理解はしていましたが、やはり全体の雰囲気を壊さないよう気を付けていました。
当日までに決定していたのは加盟タクシーを紹介した「ご当地タクシーカード」の発表と、プレゼント抽選だけ。それ以外の細かいことは現場で考えようと乗り込みました。
開催前に会場全体を歩き、ブースの設営が終わるころには、雰囲気も掴むことができました。早速、ブースへの誘導を促すため、用意してきたポスターを段ボールに貼り、パネルを作りました。
ちょうどパネルを作り終えたころ、会場に到着したタクシーのドライバーが、そのパネルを見つけるなり、躊躇なく背負って来場者にチラシを配り始めたのです。誰に頼もうか、役割分担表を作らないといけないと考えていたので、この自主的な行動には頭の下がる想いでした。
もう1つ用意したのが、各地から参加した「おもしろ行灯が載ったタクシー」や展示した「おもしろ行灯」と写真を撮ってください、というポップでした。
イベントが始まると、ポップを見た子供連れのお母さんが、車の前に子供を立たせて写真を撮り始めました。その瞬間です。タクシーの脇にいたドライバーが「乗ってみますか。運転席に」と声を掛けたのです。
それは、集まった人たちを笑顔にする言葉になりました。それをきっかけに、お母さんとワクワクした笑顔の子供たちで、たちまち順番待ちが出るほどの人気のコーナーに。
私が「以前から考えていたのですか」と聞くと、「思わず出ちゃいました」と笑顔で話すドライバーを、本当に誇りに感じたのです。
そのコーナーの感動風景は、子供たちを順番に抱き上げ、運転席に安全に座らせようとドライバーの行動でした。「レバーに足を引っ掛ける子供がいて危ないと感じた」ということでした。「しかし、腰に来ました」と笑顔で言うドライバーは輝いて見えました。
行動は伝えて実行してもらうのではなく、各人がその場で考えて「考動」する。根っこさえしっかりと共有できていれば、咲かせる花はそれぞれが意思を持って美しく咲かせることができる。
最幸のおもてなしが実行できた2日間となりました。
コラムニスト紹介
西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。