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「観光革命」地球規模の構造的変化(217) G20観光大臣会合

2019年12月1日(日) 配信

招待国含め31の国・地域の観光担当大臣らが参加したG20観光大臣会合

 今年はベルリンの壁崩壊から30周年の記念すべき年だ。東西冷戦終結後に生じたグローバル化で、国家や地域を越えて地球規模でヒト・モノ・カネ・情報が自由に行き交う時代になった。その前提として80年代に英国のサッチャー首相が提唱した「新自由主義」が、米国のレーガン政権や日本の中曽根政権でも受け入れられ、さらに90年代におけるICT革命の実現に伴って全世界における外国旅行が隆盛化した。

 1970年の全世界の外国旅行者数は1億6千万人だったが、90年には4億5千万人、2010年には10億人、18年には14億人に。そして30年には18億人に増えると予測されている。

 この結果、観光産業はいまや全世界の国内総生産(GDP)の10%を占めるリーディング産業の1つに発展し、雇用創出や地方創生などで重要な役割を果たす。一方で数多くの人々が観光旅行をすることで、オーバーツーリズム(観光公害)が問題視されるようになっている。

 この状況の中で、10月末に北海道の倶知安町で20カ国・地域(G20)観光大臣会合が開催された。今回で9回目となる会合の主要テーマは「持続可能な観光の実現」で、2日間にわたって議論され、共同宣言が採択された。ポイントは、①観光は世界的に最も成長し、かつ強靱性のある経済活動②観光の成長は自然保護や混雑対策などで数々の困難を生み出す③地方創生と観光地の持続性改善のために多様な地域への誘客を促進④イノベーションを促し、持続可能な企業を創出する⑤地域の自然や文化財を保護し、責任ある観光を促進――など。

 要するに観光産業の発展と自然保護や地域社会との共生を、いかに持続可能かつ責任あるかたちで実現していくかが世界共通の課題として議論された意義は大きい。

 しかし、現実には持続可能な観光や責任ある観光の実現は容易ではない。例えば北海道では18年度の来道外国人は312万人で14年度と比べて2倍以上に増加。その結果、さまざまな観光公害現象が生じると共に、人口減少による人手不足の深刻化によって観光立国への対応に諸々の不都合が生じている。

 果して、今後の日本は「観光立国」と「観光亡国」のいずれの道を歩むことになるだろうか?

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

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