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〈旬刊旅行新聞12月11・21日合併号コラム〉2019年の観光業界を振り返る 分散化、多様化の必要性が明確に

2019年12月13日
編集部:増田 剛
2019年12月13日(金) 配信 
2019年の観光業界を振り返る

 早いもので、今年の最終号となった。小欄では、2019年の観光業界を振り返ってみたいと思う。

  19年は長く親しんだ「平成」が終わり、5月1日に新たな元号「令和」が始まった節目の年だった。10月22日には世界各国から元首らが参列し、皇居で天皇陛下の即位礼正殿の儀が行われた。日本古来の伝統文化を、世界中に発信できた貴重な機会だったと思う。儀式を待つ間、降り続く雨が静寂を際立たせた。やがて雨が上がり、虹が架かった光景は美しく輝いた。
 
 
 5月のゴールデンウイークは10連休となった。国内の旅館やホテル、レジャー施設などは連日、超多忙を極めた。観光業界も働き方改革が進むなかで、「客はいるが、スタッフがいない」状況が顕在化した。やはり、休日を分散化しなければ、旅行者も、受入側もストレスが大きくなることを改めて示した10連休だった。
 
 働き方改革法案の成立により、4月1日から年5日の有給休暇の取得が義務付けられた。とある有名ホテルの厨房スタッフは、「今年から5日間の休暇が取れるようになった。こんなことはこれまで考えられなかった」という声もあり、休暇の分散化に向かっては一歩前進したと思っている。
 
 
 国際情勢も大きく動いた。7月の韓国向け輸出管理の運用見直し後、日韓関係は悪化の一途を辿っている。10月の訪日韓国人数は前年同月比65・5%減の19万7300人と激減した。両国を結ぶ航空路線の廃止や縮小が続き、韓国人旅行者が多く訪れていた九州や関西などでは、影響が深刻化している地域もある。
 
 しかし、特定の国や地域からの観光客に依存している状況は、リスクが大きすぎる。とくに近隣アジアを見渡すと、政治的な動きや国家間の関係によっては、今後も観光動向に大きな影響を与えることが予想できる。その意味でも、観光客の誘致も分散化、多様化していかなければならないことが明確になった。
 
 その意味では、9月20日~11月2日まで開催したラグビーワールドカップ2019は、観光業界にもたくさんのプレゼントを残してくれた大会だった。アジアに集中していた訪日外国人旅行者を、欧米豪や南アフリカなどにも広げるきっかけを作った。また、試合やキャンプ地が日本各地に広がったために、訪日客の目的の分散化、多様化につながった。
 
 
 今年は自然災害も多発した。台風15号、19号によって甚大な被害が広域にわたった。未だに鉄道や道路が復旧していない地域もある。施設が破損し、営業ができない宿泊施設もある。仮設住宅で年を越す被災者も多いだろう。
 
 10月25~26日には、北海道・倶知安町でG20観光大臣会議が開かれた。招待国を含め31の国・地域の観光担当大臣が出席し、SDGs(持続可能な開発目標)実現に貢献していく認識も共有した。オーバーツーリズム(観光公害)にも対応していく「北海道倶知安宣言」も採択された。持続可能な観光(サステイナブルツーリズム)についても、これまで以上に考えさせられる年だった。
 
 最後に、私自身も今年を振り返ると、まだまだ旅が足りない年だった。「20年は旅を深く味わう」ことを目標に、新年を迎えたい。
 
(編集長・増田 剛)

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