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年間日数緩和 「働きかけ」を 民泊認知向上へ事例づくり エアビーアンドビージャパン 田邉泰之代表に聞く

2019年12月13日
編集部:平綿 裕一

2019年12月13日(金) 配信

田邊代表への取材は11月20日、同社の東京オフィスで行われた

 住宅宿泊事業法(民泊法)が2018年6月に施行され、12月で1年半が経ち、民泊は国内で普及の兆しが強まっている。一方、同法の附則で、施行後3年経てば、検討を加え、必要な措置を取ることができるとしている。年間営業日数は180日だが、普及が進めば緩和される可能性もある。エアビーアンドビージャパンの田邉泰之代表は取材に対し、「政府にも働きかけていく。どこかの部分は緩められるかもしれない」と制限緩和に向けて取り組む考えを示した。届出数や宿泊実績は増えているなか、民泊の認知向上や普及へ事例づくりに力を注ぐ。

【平綿 裕一】

 民泊の届出数や宿泊実績は増加傾向にある。法施行時(18年6月15日)、届出件数は2210件だったが、19年6月14日時点で1万7551件と約8倍となった。

 延べ宿泊者数は18年6―7月が約22万人泊、19年6―7月では101万人泊だった。初めて100万人泊の大台に乗るなど大きく伸びている。

 観光庁の調べでは、民泊の宿泊者は海外からが8割(約77%)を占めているという。訪日客の受け皿として定着してきている。

 エアビーの宿泊可能物件数も増えている。19年11月時点で9万件(うち3万部屋は旅館ホテルなど)となった。

◇◆◆

 さらなる普及に向けては、制度自体の壁がある。民泊の年間営業日数は180日に制限されている。事業者からは採算が取れないといった声などが聞かれる。

 ただ、同法には施行後3年での見直し規定が盛り込まれている。安全性の確保や違法民泊の排除などを突き詰め、健全な市場だとの認識が広まれば、年間日数を規制緩和できる可能性もある。

 田邉氏は「もちろん政府や関係各所には働きかけていく。ホストやゲスト、地域住民、自治体など全体で認知・理解をしっかり深められれば、どこかは緩められるかもしれない。(営業日数の)180日からも増えていくのではないか」との見通しを述べた。

 制限は法だけではない。自治体は年間日数に加え、上乗せ規制ができる。全国154自治体中、54自治体が区域・期間制限を含む条例を制定。例えば、兵庫県は学校や幼稚園などの周囲100㍍以内で、年間を通して民泊の営業はできない。

 「地域のニーズに合わせる必要があるが、これまで話し合った自治体には『民泊』を納得してもらえた。あとは『どうやって(how)』の部分。普及へは事例づくりが大事になる」。

◆◇◆

 事例づくりには力を入れている。ラグビーW杯2019期間(9月20日―11月2日)、12開催地のうち熊本県や岩手県釜石市など5地域でイベント民泊を行った。 

 このうち釜石市は、釜石周辺を訪れたエアビーからの宿泊者が前年同期比180%増となった。熊本では期間中に81人が新たなホストとして活躍。その後、イベントだけでなく引き続きホスト活動できるよう、約9割が準備を進めるなど、前向きな姿勢も出てきた。

 全体をみれば、12開催地におけるエアビーからの宿泊者は、同110%増と倍増。ホストの収益も同108%増と経済効果も生んだ。

 田邉氏は「(ラグビーW杯は)ホストはもちろん、自治体や地域住民も一体となって、ゲストを迎えることができた。このような事例を全国でつくり、横展開していきたい」と語った。

 ただ、地域住民と軋轢を生むヤミ民泊などの課題もある。

 田邉氏は「サイト上に違法な物件はほぼなくなったという自信がある。観光庁や自治体とも連携し、もし指摘があれば確認し即時削除する。そして我われのプラットフォームで二度と活動できないようにしている」と語気を強める。

 「我われは一番多く物件がサイト上に掲載されている。どこよりも厳しくしていかなければならない」――。

◇◆◆

 法施行の前後、取沙汰されていたのは、ヤミ民泊やゴミ出し問題、騒音、マナー違反などマイナス面が多かった。

 法施行から1年半が経ち、人々の交流から生まれる民泊への前向きな姿勢や、地域への経済効果などプラスの面も出てきた。

 さらに届出や宿泊実績だけでなく、民泊に本腰を入れる事業者が増えている。

 同庁の11月の調査で、全国的に民泊の事業廃止件数は増加しているなかで、民泊を続ける事業者が多いとの結果が出た。

 事業廃止の理由で最も多かったのは、「旅館業または特区民泊へ転用するため」(37・6%)だった。「その他(継続の意志あり)」(22・9%)の理由は、他の事業者に運営者が変更されるものが多かった。

 「全体の半数以上は、業の種類や事業者などを変えて、同一の施設で民泊を続けることを前提とした廃止の届出だった」(同庁)と分析する。

 簡易宿所や特区民泊などへの移行で、民泊法の年間営業日数の規制は適用されない。全国的に、これまでより多く、民泊で訪日客らを受け入れたいと考える事業者の動きは活発化している。

 田邉氏は「スタートアップ(08年創業)から191の国・地域に広がり、今では1日平均200万人が宿泊するようになった。今後も、民泊の認知と理解の向上にこつこつと取り組んでいく」と語った。

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