「津田令子のにっぽん風土記(57)」「また、来よう」と言ってもらえる御前崎に~ 静岡県御前崎市編 ~
2020年1月18日(土) 配信
昨年の11月23、24日の2日間、静岡県御前崎市で開かれた「御前崎市大産業まつり」に3年連続でNPO法人ふるさとオンリーワンのまちを出展させていただいた。ご当地グルメとして人気の高い温水で養殖した「御前崎クエ」や、ご当地銘柄牛・遠州夢咲牛、噛み応え抜群の一黒軍鶏など美味しい香りに導かれるように、あちらこちらに人だかりができていた。
24日には、御前崎市観光大使を務める市出身の陸上選手でリオ五輪の4×100㍍リレー銀メダリスト飯塚翔太選手も握手を交わしたり、笑顔で記念写真に応じたりと熱心に活動していた。「世界で活躍されるなかで、少しでも御前崎という名前が伝わるといいですね」と御前崎市観光協会事務局長の小野木邦治さんは語る。
海沿いの街というと、お洒落なショップが立ち並びマリンウエアに身を包んだカップルがドライブも兼ね、車を走らせやってくると思いがち。だが、小野木さんは「御前崎は長閑な感じです。どういう風が吹くとか、いい波がやって来るとかを気にしながら、自然と海とつながっている感じですね」という。まだ人の少ない早朝、仕事の前に海に入るという方が多く、この街では「休みの日に海」ではなく、海との関わりがライフスタイルの1つになっているということなのだろう。
冬の御前崎の魅力を問うと、「この時期ならではといえば温水を利用し養殖された御前崎クエは外せません」と話す。さらに「3月ごろまでは海から日が上り海に沈む光景が見られます。とくに恋人の聖地一帯をオレンジ色に包みながら太陽が沈んでいくようすは感動的です」。ここでプロポーズを受け「来年もまた一緒に来よう」という人も少なくないという。
「御前崎を代表するランドマーク、御前埼灯台も外せないですね」と小野木さんは話す。白亜の塔形をしたレンガ造りの大型灯台。雨風にも屈せず1874年から海の安全を見守り続けている。歴史的・文化的価値が高いことから「Aランクの保存灯台」に指定されている。高さ17㍍の展望デッキに上がれば太平洋と駿河湾の大海原が広がり、その雄大なパノラマに感動し「また来たい」と願う人も多いのではないだろうか。
天竜川から流れ出る土砂が沿岸潮流に乗り、「遠州の空っ風」によって内陸に運ばれ形成される遠州灘に広がる浜岡砂丘の「風紋」に出会うために、毎冬欠かさずこの地を訪ねる。これが私の「御前崎スタイル」なのだ。
コラムニスト紹介
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。