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「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(180)」高校生たちがつくる地域の未来(兵庫県)

2020年1月26日
編集部:長谷川 貴人

2020年1月26日(日) 配信

4カ月にわたるWS成果を発表する地元高校生ら

 各地で高校生たちによるまちづくり活動が盛んである。地域景観の学習と保全・活用、地域伝統芸能の継承、古民家再生や無人駅への出店などまちのにぎわい再生、観光マップ作成やガイドなど、多くは地元住民とも協働した地域課題解決型の取り組みである。

 そんななか、12月中旬、日本遺産「播但貫く、銀の馬車道・鉱石の道」(兵庫県)の活性化を考える「高校生フォーラム」に参加させていただいた。会場は、姫路市から播但線を下った神河町のグリンデルホールである。当日は、沿線5市町から集まった6つの高校生たちのほか、愛媛県新居浜市から新居浜南高校ユネスコ部の学生も招待され、日頃の活動成果を発表した。

 日本遺産「銀の馬車道」は、朝来市の生野銀山から姫路・飾磨津までを結び、産銀や産業用資材などを運んだ全長49㌔の明治の産業用高速道路である。同じ歴史を持つ地域の高校生らは、8月から4回にわたって地域の歴史を学ぶワークショッブの成果を発表する機会となった。

 生野銀山史跡の往年のようすを仮想現実(VR)で再現するハイテク歴史館、インスタグラム(銀スタグラム)を用いて自ら発信するPR戦略、銀山をライトアップして行う婚活ツアーなど、高校生らしい楽しい企画が次々と発表された。

高校生によるシンポジウム風景

 生野鉱山の近代化に貢献したフランス人技師のジャン・フランシスク・コワニエ氏は、愛媛県の別子銅山も指導した。その縁で参加した新居浜南高校ユネスコ部の4人の高校生は、10数年にわたる河野義知先生の指導の下に日ごろの活動を展開している。銅山の産業遺産の魅力を伝えるために古老からの地道な聞き取り調査、新規転入者に向けたガイドツアーの実施、地元小中学生向け出前講座など、地道な活動である。

 彼らの大きな目標は、持続可能な地域社会づくり、SDGsの目標を地域の中で具体的に展開していくことである。子ども食堂の運営は、高校生と地域の小中学生、地域住民の「たまり場」づくりのためのシンボル的な活動である。

 観光まちづくりの活動は従来、大人たち、それも観光に直接の利害関係を持つ事業者の活動にとどまっていた。しかし、観光にとって楽しく活力のある地域づくりは不可欠。日々の暮らしの豊かさやにぎわいがその地域の魅力の大きな要素となるからである。その意味で地域の高校生をはじめ、子供らの参画はこれからの観光地域づくりの大きな目標になるであろう。

 地域を学ぶ、討議する、地域を視察し調査する、これらの成果をまちづくりに生かす。こうした生きた地域学習のサイクで大切なことは、小学生から高校生、あるいは大学生がそれぞれの役割を担うこと、複数の地域の学校がテーマでつながり連携していくことである。地域における子供らの観光学習が、さらに体系化され盛んになる1年としたい。

(東洋大学大学院国際観光学部 客員教授 丁野 朗)

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