test

14年国内はやや厳しい1年に、日本交通公社旅行動向シンポ

国内と訪日を分析
国内と訪日を分析

訪日は地方での受け入れが鍵

 日本交通公社は2013年12月19日に「第23回旅行動向シンポジウム」を開き、観光政策研究部の塩谷英生次長と相澤美穂子主任研究員が国内・訪日旅行市場の動向と展望について講演した。2014年の国内旅行は旅行意欲が伸び悩み、やや厳しい1年になるとの見方を示した。一方、訪日旅行の今後は、東・東南アジアの中間層と高所得層の増加による市場拡大が期待でき、FIT化とリピーター増加で地方での受け入れが重要になるとの展望を語った。

塩谷次長
塩谷次長

 国内旅行はまず、景気動向と旅行市場の関連について解説。国内旅行量の長期波動は景気との連動が基本で、塩谷次長は「旅行量のピークは、インフラ整備が熟して景気が下り坂になるタイミングで発生することが多い」と説明した。続いて旅行実績との連動がみられるJTBオピニオンリーダー層調査を紹介。消費増税や給与・ボーナス減少の懸念など景気への不安から、14年の年間旅行回数が増えると答えたのは前年調査の40・4%から31・8%に減少し、14年は「やや厳しい1年になる」と予想した。

 近年の旅行市場の質的変化をみると、ネット旅行会社の躍進、航空運賃自由化、高速道路割引、LCC登場、ダイナミックパッケージ増加などの構造変化でFIT化が加速。旅行会社の取扱額は07年の8兆2千億円をピークに、12年には6兆円まで減少、旅行会社利用率も中期的にみて低下傾向だ。2000年代前半には、自由度の高いフリープラン型旅行の比率が上がり、00年代後半には旅行予約サイトの利用率が上昇。旅行の申込み方法は、旅行予約サイトの利用が07年の13・4%から12年の24・9%まで増加し、その分宿泊施設での直接予約が41・9%から31・5%に減少した。

外国人比率30年に、6%から17%へ拡大

 2030年に向けた観光地経営のポイントには、(1)80代ツーリズム(2)FITを中心としたインバウンド(3)スマート観光地――の3つをあげる。

 日本の人口は10年の1億2800万人から30年には1億1700万人まで減少。宿泊観光旅行量は20年間で1200万人回減り、年代別では、70代と80代以上のみが増加する。70代以上は、観光旅行の利用交通機関で自家用車比率が低く、貸切バス比率が高い。塩谷次長は、「80代ツーリズムの成立には団体ツアーとFITの両面の施策が必要」と話した。

 将来の延べ宿泊数の動向をみると、12年の4億3900万人泊から30年には4億5千万人泊へと微増。内訳をみると、日本人が4億1300万人泊から3億7300万人泊へと大きく減少し、外国人が2600万人泊から7700万人泊へと飛躍的に増加する。外国人比率は6・0%から17・1%へとアップし、人口減による日本人旅行量の落ち込みをインバウンドが相殺する形になる。国内観光消費額に外国人客消費が占める比率は、日本は11年の4・5%から30年にはイギリス並みの17・1%まで増加。外国人観光客比率の高い地域では、国内旅行市場が縮小しても延べ宿泊者数が増える見込みで、塩谷次長は「外国人客を受け入れられない地域は、旅行量がマイナスになる」と指摘した。

 また、観光地の経営は、人口減少と財政悪化の課題が大きく、塩谷次長は「スマート観光地への取り組みが必要」と強調。「法定外税や、入湯税超過課税、協力金、事業収入などの自主財源が課題で、観光部署の予算規模は小さく、都市計画や交通計画と連動した観光計画が不可欠だ」と提起した。

地方ニーズ拡大、交通が課題に

相澤主任研究員
相澤主任研究員

 相澤主任研究員はインバウンドの動向と展望について解説した。03年のビジット・ジャパン(VJ)キャンペーン開始から約10年で市場が2倍に拡大。韓国、台湾、中国、香港のシェアが大きく伸び、東南アジアも増加、英仏独、米国・カナダは横ばいだった。震災前と13年を比較すると、台湾と香港、東南アジアが大幅増をみせ、欧米は横ばい。各国の海外旅行における訪日シェアは、台湾が震災前の13%から12年に14%へと微増したのに対し、韓国は20%から15%、中国も8%から5%へと減少。いまだ回復していないことがわかる。

 旅行内容の変化をみると、10年と12年の比較で、香港を除くアジアで個別手配率が上昇しており、とくにシンガポールと中国の伸びが顕著。パッケージツアー利用率の高い台湾でも45%から51%へと増加し、ついに個別手配率が半数を超えた。

 台湾の2倍以上の伸びをはじめ、各国で訪日リピーターが増加しているが、相澤主任研究員は「訪日回数が増えるにつれ、地方への訪問率が上がり、地方への分散化が進む」と報告。フリープランやFITでの台湾人再訪日希望者の49%に地方訪問経験があり、同じく49%は未経験だが地方訪問を希望している。ただし、地方訪問への課題点も少なくなく、言語よりも交通機関の手配の手間や交通費、移動時間などの懸念が多かった。また、ショッピングニーズの高さから大都市を拠点に地方を訪れたいという声も多い。

 今後の見通しでは中国、インド、東南アジアで引き続き高いGDP成長率が見込まれ、早ければ30年ごろまでにはマレーシア、中国、タイが先進国入りする。中間層や高所得層の増加でアジアの市場拡大が期待され、20年には訪日外客数1600万人、25年に1980万人、30年に2440万人の予想をたてた。

 震災や中国の旅遊法施行がFITの進展を後押し、FIT化とリピーター増加にともない、地方訪問のニーズが徐々に顕在化。相澤主任研究員は「地方でどれだけ受け入れられるかが今後重要になる」とまとめた。

いいね・フォローして最新記事をチェック

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。